(政界地獄耳) いまさら誰かの顔色をうかがって選ぶな - 日刊スポーツ(2021年2月13日)

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★元首相で東京五輪パラリンピック組織委員会会長・森喜朗が辞意を表明した。ところが、事もあろうに組織委評議員会議長・川淵三郎を後継指名して影響力を残そうとして、事態は再び迷走し始める。11日に報道が出始めるころから、森の辞任を求める人たちから「なぜ83歳から84歳に指名されるのか」との正論が聞かれた。その川淵は就任前からその気になって「森を『相談役』にする」など調子に乗り始めた。

★無論、これから手続きを踏むわけだが、「(辞任する)森が指名する立場なのか。それでは院政を敷くだけではないか」といぶかる声や、過去のアジア諸国への露骨な蔑視発言などから歴史修正主義、スポーツ根性論などを問題視する声もある。一方、関与するすべを持たない官邸は「若い女性はいないのか」と打診するなど、こちらも問題が起きたので女性にしようというステレオタイプというのか、事態の深刻さを理解しない対応が続いた。

★つまり、本当に5カ月後に開催する東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの複雑な問題の整理、コロナの問題、スポーツ界のセクハラやパワハラの撲滅など、人格的にも実務的にも総合的な人材を探して川淵の名前が出てきたのだろうかという問いに答えを持つ人がいない。森が推薦したとか、IOCがいいと言っているとか、スポンサーが納得しているなどとして責任ある人選をしていない。にもかかわらず、名前が先行して白紙に戻るこのやりとりが世界から笑われているという現実からスタートしなければならない。今のままでは「なんでもいいから体裁を整えろ」と言っているのと同じだ。

★森の辞任はスポンサーが難色を示し始め、信頼していた国際オリンピック委員会IOC)のバッハ会長に手のひらを返されたことからの迷走でもある。だが、この段階で人材が皆無であることを憂うべきだ。五輪の実現か中止かの判断を全体を見回して判断し、いずれの決断をしても残務処理まで付き合える人材が必要なのだ。いまさら誰かの顔色をうかがうだけで選ぶ必要はない。(K)※敬称略