<金口木舌>井戸端会議だからこそ - 琉球新報(2021年2月14日)

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「おばちゃんの井戸端会議じゃないんだから」。女性議員の発言を男性議員が皮肉った。琉球新報社が県内の女性市町村議員を対象に実施したアンケートで寄せられた記述。女性議員はセクハラや性差別と受け止める

▼共同井戸に集う女性たちが世間話をすることをからかっている。軽んじられがちだが、公の場で多彩な人が自由で対等な会話を楽しむのが「井戸端会議」。地域の課題に気付く機会になる
那覇市の繁多川公民館を運営するNPO法人の名称は「1万人井戸端会議」。住民参加のワークショップを開き、公民館と住民の役割を分担し災害時の避難訓練に取り組んだ。井戸端会議の手法で地域づくりを進めている
▼公の空間と反対の「密室」が問題になっている。東京五輪パラリンピック組織委員会森喜朗会長が女性蔑視発言を受けて辞任を表明した。森会長は後継に五輪の選手村村長の川淵三郎氏を推したが「密室」と批判を浴び頓挫した
▼会長の選定・解職は規定で理事会の権限と定められている。会長が独断で後任を探そうとした。あきれた人は多いだろう。特権のある男性中心に物事を決める「ムラ社会」のおきてが見える
▼日本の意思決定の場は男性が圧倒的多数を占める。同質集団は異論が出にくい、変革が生まれにくい。「井戸端会議」が生み出す空間は、多様で柔軟な発想があふれている。