(政界地獄耳) 大深度地下問題 リニア工事どうなる? - 日刊スポーツ(2020年12月21日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202012210000093.html

★18日、東日本高速道路は東京都調布市東京外郭環状道路(外環道)トンネル工事現場付近で起きた道路陥没事故を巡り、会見で「トンネルの掘削工事が要因の1つである可能性が高いと推定される」という分析結果を発表。工事との因果関係を認めて謝罪した。この工事は01年に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」に基づいている。同法は通常利用されることのない深度の地下空間を用地買収せずに公共の用途に利用できるという法律で、地下40メートルより深いところでの工事は地表に大きな影響はないといわれてきた。国交省は「補償すべき損失も発生しない」と推進してきたが、東日本高速道路が因果関係を認めたことは、同法の深度が深ければ安全で問題ないという大前提を覆すものとなる。

★ただ、この余波は大きい。調布市民のみならず、地下に高速道路が通っている住宅は陥没しなくとも、地価が下がるなどの問題が発生することは必至で、陥没現場の補償問題は被害がない高速のルートの上に住む住民の生活をも巻き込む重大関心事となる。また、この法律を使うことで工事ルートの事前の地盤調査の甘さも指摘される。「そこだけ特殊な地盤だった」との説明でいいのだろうか。

★調査委員会の小泉委員長は「深さ40メートル以上の地下であれば、地上に影響は出ないだろうと思っていたが、影響が出たというのが事実だ。今後、大深度で工事を行っていくときは、影響を十分に考慮したルートの選定を行っていかないといけないと、今は思っている」とした。ここで問題になるのはJR東海が進めるリニア中央新幹線だ。東京都、神奈川県、愛知県で約55キロの区間が「大深度地下」で工事が行われる。これでリニア問題は静岡県だけの問題ではなく全国区のテーマになるといえる。(K)※敬称略