[辺野古受注社に天下り]防衛省は疑念に応えよ - 東京新聞(2019年7月19日)

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名護市辺野古の新基地建設を巡り、軟弱地盤の改良工事に関する報告書をまとめた建設コンサルタント会社3社に、防衛省OBが再就職していたことが明らかになった。
2009年度から18年度までの10年間で計7人。3社は共同企業体(JV)を含めて12年度から18年度にかけて、辺野古コンサル業務34件、約112億円分の業務を受注していた。
岩屋毅防衛相は退職者の再就職を認めた上で、「関係法令の規定に基づき適切に行われている」と説明した。
しかし、発注者と受注者という利害関係にある中で、防衛省OBが天下っている企業の受注構図はいびつで、疑念を抱かざるを得ない。
報告書には、軟弱地盤が水面下90メートルあるにもかかわらず、工法の検討に当たり「改良可能な最大深度は70メートル程度とする」などと記述している。
地盤改良は土砂による水の濁りや騒音、振動など環境への影響は想定範囲を超えることなく施工することが可能と結論付けている。
防衛省が進める事業に、同省OBがいる業者がお墨付きを与える形となったが、国会で報告書が公表された際には野党から異論が相次いだ。
防衛省退職後2年以内に営利企業特殊法人公益法人などに再就職する場合は届け出が必要になる。一定の管理職以上の再就職状況は公表される。今回のOBは届け出ているという。
ただ、2年以上たてば届け出の必要はなく、天下りの実態が把握されているとは言い難い。

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防衛省OBの天下りは、これまでも度々問題になっている。
16年には、新基地建設に絡む697億円分の工事を受注した業者に、防衛省自衛隊天下り先が含まれていたことが分かった。13年から15年の2年間で、受注した65社のうち14社に防衛省職員が再就職していることを当時の中谷元防衛相が認めている。
移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書作成関連事業の受注企業5社に同省OB7人が再就職していたことも国会で報告されている。
過去には防衛施設庁(当時)が発注した工事を巡る官製談合事件もあり、天下りが談合の温床になってきた。
OBが出身省庁へ受注を促すことで、特定業者との癒着につながってはいないか。
新基地建設事業そのものの妥当性や信憑(しんぴょう)性も問われることになる。

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防衛省OBが天下った企業が受注した工事などに支払われたのは言うまでもなく税金である。ルールに抵触しないとはいえ、税の適正・公平な執行を妨げてはいないか。
県関係の国会議員が新基地建設関連工事を受注した会社から寄付を受けていたこともあった。沖縄防衛局が設置した環境監視等委員会の一部の委員が、移設事業の受注業者から多額の寄付を受けていた問題も批判を浴びた。
辺野古とカネ」を巡る問題が相次いで浮上する中、防衛省は国民の疑念に丁寧に応えるべきだ。