(余録) 米映画「オズの魔法使」(1939年)で… - 毎日新聞(2020年10月4日)

https://mainichi.jp/articles/20201004/ddm/001/070/121000c

米映画「オズの魔法使」(1939年)で少女ドロシーを演じたジュディ・ガーランドさんは同性愛者の偶像的存在だった。薬物中毒や神経症に苦しみながら女優を続けたことが共感を呼んだ。多様性の象徴であるレインボーフラッグも映画の主題歌「虹の彼方(かなた)に」が由来とされる。
69年6月、ニューヨークで同性愛者らが集まるバーに踏み込んだ警官隊と客らが衝突した。「ストーンウォールの反乱」と呼ばれ、性的少数者(LGBTなど)の権利獲得運動の起点になった。直前にガーランドさんが47歳の若さで死去したことも影響したという。
2016年6月、当時のオバマ大統領は現場周辺を国定史跡に指定し、公立学校や政府機関、軍などでも性的少数者の権利を広げた。同性婚を全米で容認した15年6月の米最高裁判決が大きなきっかけになった。
ニューヨークの地下鉄やバスはその後、「レディース・アンド・ジェントルメン」のアナウンスをやめた。日本航空も1日から同様の措置を取った。性的少数者への配慮は世界的な流れだ。
日本でも8割近くが同性婚に賛成し、7割が差別禁止の法整備を求めているという調査結果がある。政府や国会も真剣に議論すべき時期だろう。
心配なのは米国の行方だ。トランプ政権はオバマ時代の決定を徐々に覆してきた。15年の判決に加わったリベラル派のギンズバーグ判事の死で最高裁でも保守派の影響力が一層強まる可能性が高い。逆風を受けるレインボーフラッグへの支えが必要になる。