強制わいせつ「性的意図」不要 最高裁 47年ぶり判例変更 - 東京新聞(2017年11月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201711/CK2017112902000247.html
http://archive.is/2017.11.29-135314/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201711/CK2017112902000247.html

わいせつな行為をしても性欲を満たす意図がない場合に、強制わいせつ罪に問えるかどうかが争われた刑事事件の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は二十九日、同罪は「性欲を満たす意図がなくても成立する」との初判断を示した。「同罪の成立には性的意図が必要」とした一九七〇年の最高裁判例を四十七年ぶりに変更した。十五人の裁判官全員一致の意見。
判決は、性犯罪に対する社会の受け止め方の変化から「今日では、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべきで、判例の解釈はもはや維持し難い」と指摘。「性的意図を一律に同罪の成立要件とすることは相当でない」とした。
二〇一五年に十三歳未満の少女の体を触って裸を撮影したとして、強制わいせつと児童買春・ポルノ禁止法違反罪に問われた被告の男(40)の上告を棄却し、一、二審判決の懲役三年六月が確定する。
最高裁は七〇年、報復目的で女性を裸にして撮影した事件について「強制わいせつ罪の成立には性的意図が必要」と判示。今回の事件で被告側は、知人から金を借りる条件としてわいせつな画像を送るように要求されただけで「被告に性的意図はなかった」とし、この判決を根拠に無罪を主張していた。
一、二審判決は「被害者の性的自由が侵害されたかどうかは、性的意図の有無に左右されない。性的意図がなくても同罪は成立する」と指摘。七〇年の最高裁判例を「相当でない」として実刑判決を言い渡し、被告側が上告。被告側は、性的意図が不要となれば医療行為などが処罰対象となりかねないなどと主張していた。
大法廷が刑事事件の判例を変更するのは、横領罪を巡る〇三年の上告審判決以来、十四年ぶりとなる。

<強制わいせつ罪> 刑法176条は、暴行や脅迫をして13歳以上の男女にわいせつな行為をすれば6月以上10年以下の懲役にすると規定。相手が13歳未満の場合は暴行・脅迫要件はなく、被害者の承諾があっても成立する。1970年の最高裁判例は「性欲を興奮、刺激または満足させる性的意図」を成立要件にしていたが、専門家らから見直しを求める声が出ていた。