(放送芸能)LGBT映画祭が8日開幕 偏見・苦難・理解の25年 - 東京新聞(2017年7月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2017070602000189.html
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同性愛など性的少数者(LGBT)を扱った映画を紹介する「レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」が8日に開幕する。今年の米アカデミー賞作品賞に「ムーンライト」が、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞に「怒り」の妻夫木聡が選ばれるなど、近年ではLGBTが登場する映画も珍しくはなくなった。第1回の開催から25年。偏見や苦難を乗り越え、徐々にLGBTへの理解が進む現状を映画祭関係者も歓迎する。 (鈴木学)
映画祭は1992年、東京・中野サンプラザの研修室で始まった。始めたのはゲイ雑誌「アドン」(96年廃刊)の編集長だった南定四郎(ていしろう)さん(85)。ゲイ組織の世界大会で、ドキュメンタリーを上映した主催者側からの提案がきっかけだった。当初は映画を楽しむというより人権を考える意味合いが強かったという。
「『いかがわしい映画祭をやっているからやめさせて』という電話が施設にあって、職員が確認に来た。偏見は強かった」と南さんは振り返る。性的少数者であることの悩みや葛藤、同性婚同性カップルの子育てなど多彩な作品が上映され、今では年約6000人が来場。4分の1はLGBTの当事者以外だという。
映画ライターよしひろまさみちさん(44)は、同映画祭が日本のLGBTイベントの草分け的存在だとして「続けることに意義がある」と指摘、「この映画祭でしか見られない作品も多い」と語る。映画界全体では、LGBT映画の製作本数そのものが増えている状況にはないというが、大作や話題作で取り上げられることで、注目される機会も増えているという。
南さんは「男女の結婚が盤石でなくなり、普通の恋愛も描き尽くしてしまった。LGBTには新しい物語をつくる余地がまだあり、採用されるようになっている」との見方を示す。
一方、よしひろさんは、映画に比べ、現実社会での認知や環境整備の遅れを指摘する。昨年12月には、大阪市で男性同士のカップルが男児の養育里親に認定されたが、よしひろさんは「これ一つとっても、日本は映画の内容に現実が追いついていない」と、いらだちを隠せない。
ただ、外資系ばかりだった映画祭への企業協賛に、日本企業からも声がかかるようになった。映画祭代表を務める宮沢英樹さん(42)は「当事者が映画祭に来る足どりも軽くなっている感じがする。以前は『誰かに見られるのでは』と勇気が要った人も多かった」と明かす。映画祭で扱う作品のほとんどは一般の映画館では上映されない。宮沢さんはLGBT映画が普通に上映されることが理想として「少しずつでも近づいていけば」と願う。
◆今年は長編11、短編集2本
<レインボー・リール東京> 一昨年までの名称は「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」。第25回の昨年、ゲイとレズビアンに限らないとして、多様な性を象徴する虹(レインボー)と映画フィルムを意味する「リール」を名称に入れた。
今年の映画祭は東京・シネマート新宿で8〜14日、青山スパイラルホールで14〜17日に開催。トロント国際映画祭で「本年度、最も大胆でセクシーな映画」と絶賛された「アンダー・ハー・マウス」、孤児を養子として育てるゲイカップルを描いた「ファーザーズ」など長編11本、短編集2本を上映。日本からは女優東ちづるプロデュースのドキュメンタリー「私はワタシ〜over the rainbow〜」などが参加する。詳細は映画祭のホームページで。

<LGBT> レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー性同一性障害など身体と心の性に違和感がある人)の頭文字からとった性的少数者の総称。電通ダイバーシティ・ラボの「LGBT調査2015」によると、日本のLGBT層は7.6%と推計されている。