(政界地獄耳) 野党まとまりバージョンアップは成功 - 日刊スポーツ(2020年9月19日)

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★前首相・安倍晋三の退陣、自民党総裁選、菅内閣成立とあわただしく過ぎたが、一方、合流した立憲民主党の規模が拡大され、リニューアルした。国民には代表・枝野幸男、幹事長・福山哲郎と新鮮味がないが、いったいどう変わったのだろうか。政界にも国民の中にも民主党に戻っただけという指摘がある。顔ぶれが変わらないのだから変わるはずがないという理屈だ。だが都知事小池百合子、元民進党代表・前原誠司、連合会長・神津里季生がもくろんだ希望の党とリベラル排除が立憲民主党を生み、野党を強くさせ、国民民主党の勢力を上回っていった。

★あれで野党は終わったと誰もが思っただろう。ところが、いびつながらも立憲民主党を軸に新しい野党を作り上げてきた。ほんの5年前まで、野党は「共産党を除く」野党各党というくくりだったが、その共産党も今では野党共闘の中核を占める。先の首相指名選挙では共産党、国民民主党、れいわ新選組社民党が枝野の名前を書いた。野党はここまでまとまってきた。無論、党が違うのだから同床異夢といえるかも知れない。しかし、違いを認め合い多様性の中でまとまるという過去の野党にない共闘ができ上がりつつある。

★当初、枝野は人事で国民民主党の幹事長として合流を取りまとめた平野博文を指名したが平野が辞退し、福山が幹事長になった。極めて賢明な判断だったと思う。一方、岡田克也野田佳彦らは先輩風を吹かせていろいろと人事に注文を付けた。いつも通りの野党政治のやり方だ。枝野はそれもはねつけた。無論、枝野・福山体制に若手からも異論が出ていることを承知の上で、今はまとまることを選び、それに応えようとする機運は今までにない環境といえる。1つは労組の団結が崩れ、党の発言力が増したこともあるだろう。それで次の選挙でどうなるとまで、捕らぬたぬきの皮算用はしないが、バージョンアップは成功したようだ。(K)※敬称略