(政界地獄耳) うごめく思惑 逃げるが勝ちは正しいか - 日刊スポーツ(2020年6月2日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202006020000049.html

★朝日、毎日両新聞の内閣支持率がともに30%を割り込み、共同通信の最新の調査でも39・4%となった。共同の40%割れは18年5月の38・9%以来だが、この数字も国会を閉じれば野党の活躍の場がなくなり、ニュースは政府のものだけになるため自然と回復する。つまりG7サミットに行き、そのまま秋までじっとしていればいつもの安倍内閣に戻るという寸法だ。

★ところが米国はそれどころではない。コロナ発生と経済打撃、失業者増加で膨張したフラストレーション。警察対市民の今や内乱状態で、コロナ禍から独メルケル首相もサミット辞退を表明。サミットは秋までずれ込む寸法に、首相・安倍晋三は海外逃亡もままならない。そうなると永田町の「政界スズメ」たちは暇を持て余し「解散風」を吹かせる。この風にはいくつかの効果がある。コロナ禍で地元にも帰れない若手議員たちがゆるんでいるため、緊張を促す。ベテランにはその後には内閣改造があると夢想させ、官邸に忠誠を誓いおとなしくなる。

★一方、新型コロナウイルス第2波と解散が重なるのではないか、そもそも河井克行・案里夫妻の運動員買収事件が秒読み段階に入り、今月17日の国会閉会後すぐ着手の可能性もあり、選挙とカネに国民の厳しい目がある中、解散などできるかという自民党内の声もある。自民党中堅議員が言う。「安倍チルドレンと言われる3回生以下の議員たちが、もう安倍の風だけでは勝てないと政権から距離を置くのが空気でわかる」。別の自民党中堅議員は「今は、国会を閉じずにどんどんコロナ対策を見せた方が得策。検察官定年延長問題や種子法改正など火種はあっても、取り下げては明らかに政権が弱体化していることがわかる」。政界はひとつの出来事にもこれだけ考えの幅がある。それを決めるのが政権ならば、今は逃げるが勝ちと判断したのだろうが、それが正しいかどうかはわからない。(K)※敬称略