(政界地獄耳) 進歩ない「財布のひも締めれば…」 - 日刊スポーツ(2020年4月22日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202004220000072.html

地方自治体が混乱している。16日夜、首相・安倍晋三が「すべての都道府県において、都道府県をまたいで人が移動することを絶対に避けるよう住民に促していただくようお願いする」と全国に緊急事態宣言を出しながら、コロナ担当相・西村康稔は「特定警戒都道府県以外の34県ではすぐ何か必要になる段階ではない」とした。つまり全国に出した緊急事態宣言は、不要不急のものだった。これで34県の知事は対応に苦慮することになる。一方、西村は地方創生交付金の1兆円の運用を休業補償に充てられるようにした。

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく要請等の仕事は、国の事務を地方に委託したもの(法定受託事務 インフル法74条)で、国政選挙の事務や旅券発行事務と同じ扱いだ。国が具体的基準を詳細に示して「こうすべし」と言えば、各地はそれに従って粛々と仕事行うだけのこと。それに対して地方創生の交付金の使途は「自由に使えます」を最初に掲げた以上、あれやこれや「ご指導」すべきではなかった。こういった基礎的な整理もできない政治はあきれるばかりだ。

霞が関の官僚が言う。「もし合理的理由で、休業協力金に地方創生交付金は使うなということならば、交付金補助金交付要綱にそう書けばよいだけのこと」。その細則に思いが至らず、地方創生相にも西村にも説明できていないのならば、官僚統治機構の劣化が招いた人災ともいえる。いまこそ、限りある財源をどう運用するか、各省の能力が問われる。財務省のように財布のひもを締めればしのげるという発想から脱却しないと、明治時代から続く官僚機構に進歩がない。今あるスキームの拡張だけでなく、さまざまな支援策、失業対策、景気対策、経済対策を統合して細かく整理して現場となる県や市町に落とし込む丁寧な法整備とスキームを作らない限り、国全体を動かすことはできない。(K)※敬称略