<金口木舌>感性の花開く時を待つ - 琉球新報(2020年3月28日)

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教育に新聞を活用するNIEを長年実践してきた藏根美智子さんが小学校の校長をしていた頃の話。周りを気にせず授業中に歩き回る3年の男子児童がいた。本来優しい子だが落ち着きがなかった

▼児童を校長室に呼んで授業をしたこともあった。雑談をする中で、その子の趣味が魚釣りだと知る。釣りの話を新聞の「声の欄」へ投稿するよう助言した。やがて、児童の文章が掲載される
▼「自分の名前が載るなんて夢にも思わなかった」と児童は喜んだ。荒れた言動はなくなった。「自己表現を通して子どもは自信を付けるようになる」と藏根さん。きっかけがあれば子どもは変わる
▼俳優の宮城まり子さんは、障がいのある子が十分な教育を受けることができなかった1968年、静岡県浜岡町(現御前崎市)に養護施設「ねむの木学園」を設立した。絵画や音楽を通じて子どもの能力を引き出す教育を実践した
▼「言葉でしゃべれない子も、絵でしゃべることができる」。自然や音楽、人との触れ合いを通じて子どもの感性が花開くのを待った。その宮城さんが21日に他界した。子どもたちからもらう感動を糧に歩んだ人生だった
▼「1人の子ども、1人の教師、1冊の本、そして1本のペンが、世界を変えられるのです」。宮城さんの訃報に接しノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの言葉を思い出した。