<金口木舌>かなわなかった思い - 琉球新報(2020年2月23日)

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「未来のあなたを見たいです。あきらめないで下さい」。2019年1月に虐待死した千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さんが、学校で書いた自分への手紙だ。丁寧な文字で自身を励ます10歳の少女の願いに、胸が張り裂ける思いだ

▼心愛さんが亡くなって1年余り。虐待防止への関心が高まる中、神戸市の児童相談所に助けを求めた小学6年の女児が追い返された。当直の男性職員は、午前3時すぎの女児の訴えにも「緊急性を感じなかった」という
▼相次ぐ悲惨な虐待事件を受け、親権者や里親らによる体罰禁止規定を盛り込んだ改正児童虐待防止法が4月に施行される。厚生労働省は子どもへの身体の苦痛や不快感を与える行為を「体罰」と初めて定義した
厚労省の指針は体罰の具体例に「頰をたたく」「長時間正座させる」「夕食を与えない」など5例を挙げる。法律で禁止されても、閉ざされた家庭内で「しつけ」と称して子どもに暴力を振るう親に、「体罰」を自覚させるのは容易ではない
児童相談所は問題のある親から子どもを守るため、強制的に引き離すことができる。社会全体で体罰禁止の理解を深めながら関連施設で勤務する職員の専門性を高めなければ、虐待は根絶できない
▼子どもたちの命こそ最優先だ。これ以上明るい未来を消さないために、心愛さんの思いを全ての大人が肝に銘じる必要がある。