<金口木舌>多様な学びの場を - 琉球新報(2021年6月12日)

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子どもの通っていた保育所に、重度の障がいのある子がいた。歩行が不自由で介助が必要。手先も自由に動かせないため、食事の手助けも必要だった。保育所には看護師が配置され付き添っていた

▼障がいのある子が「置いてきぼりにならないか」と当方は心配した。しかし取り越し苦労だった。絵本に興味を示すその子のそばに他の子どもたちが座り、ページをめくる。給食時間になると食事を運んできてくる子もいた
▼障がいのある子は珍しくない。それが当たり前だと、子ども同士は自然に育ち合う。障がいへの「偏見」を持っているのは自分だと痛感した
▼障がいの有無を超え、共に学ぶ「インクルーシブ教育」は日本も批准した障害者権利条約に掲げられている。障がいのある子と家族が地域の学校への通学を望んでも、環境が整わず特別支援学校に進学する実態はまだある
▼「医療的ケア児」や家族に対する支援法が国会で成立した。保育所や学校への看護師らの配置や、家族の相談に応じる支援拠点を全国に設置することが柱だ。今後、たんの吸引など「医療的ケア」の必要な重度の障がいのある児童生徒の通学環境が整うだろう
▼法は学ぶ権利を保障し、障がいのある児童生徒と家族が地域の学校への進学を望んだ際の後ろ盾になる。学ぶ場所の選択肢が増えていけば、誰にとっても豊かな社会になるはずだ。