「森友」再調査 政府の信任にかかわる - 朝日新聞(2020年3月28日)

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歳出総額が100兆円を超す新年度予算が成立した。これを受け政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する緊急経済対策の策定と新年度補正予算案の編成を本格化させる。
改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」について、安倍首相はきのうの参院予算委員会の締めくくりの質疑で、「現時点において、宣言を行う状況には至っていない」との認識を示した。
ただ、東京都内の感染者が増え続け、首都圏の知事が共同で今週末の外出・移動の自粛を求めるメッセージを発するなど、今後の推移は予断を許さない。政府が厳しい判断を迫られる局面も十分予想される。
首相が緊急事態を宣言すれば、各知事の権限で、外出の自粛やイベントの開催制限、学校や老人福祉施設の使用停止などを求めることができる。市民の自由や権利を制限し、生活の不便を強いるだけに、政府に対する国民の信任がなければ、幅広い理解と納得は得られまい。
その意味で見過ごせないのが、森友問題に対する再調査をかたくなに拒み続ける首相や麻生財務相の姿勢だ。
財務省の公文書改ざんに加担させられ、自ら命を絶った近畿財務局の赤木俊夫さんの手記が公表されて1週間。すべてが当時の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長の「指示」だったとして、関係者の実名を挙げて、一連の経緯が事細かに記録されていた。
佐川氏が後に国税庁長官に就任するなど、改ざんを命じた側の幹部が軒並み「出世」するなか、赤木氏は自責の念に苦しみ、死を選んだ。最期に残したメモには「最後は下部がしっぽを切られる」とあった。
首相と麻生氏はこの間の国会で、2年前に財務省がまとめた内部調査と手記の内容に「大きな乖離(かいり)」はないとして、再調査に応じない考えを繰り返し答弁した。「真実を知りたい」という遺族の切実な訴えに向き合おうという誠意は感じられない。
国会でのやりとりを受け、赤木さんの妻は「2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」とコメントした。もっともな指摘だ。真相に迫るには、独立した第三者による調査が不可欠である。
改ざんされた公文書と虚偽の答弁で、行政監視機能をないがしろにされた国会こそが、その任に当たるべきではないか。「政府事故調」とは別に、福島第一原発の事故を検証した「国会事故調」の例もある。
この問題の核心でありながら、財務省が調査もしなかった国有地の大幅値引きの経緯を含め、ここは与野党が一致して全容解明に乗り出す時だ。