https://mainichi.jp/articles/20200325/ddm/005/070/067000c
http://archive.today/2020.03.25-001448/https://mainichi.jp/articles/20200325/ddm/005/070/067000c
非正規労働者の待遇改善を企業に求める「同一労働同一賃金」の制度が、4月1日からスタートする。まずは大企業の非正規労働者とすべての派遣労働者が対象で、2年目から全面実施となる。
2018年に成立した働き方改革関連法に基づく対策だ。非正規労働者の賃金は正規労働者の6割程度にとどまってきたことが背景にある。
改正法は同じ企業に勤める正規・非正規の労働者の間で、不合理な待遇差や差別的取り扱いを禁じた。パートや有期契約の労働者だけではなく、派遣労働者も含めた点に意義がある。
厚生労働省の指針では、基本給や賞与は勤続年数や能力・成果が同じ場合は、原則同額を払うこととしている。差を認めるのは、転勤や異動が正社員に限られる場合などだ。
通勤手当や出張旅費、休憩室や社宅の利用など福利厚生については、正規・非正規で区別しないよう求めている。
合理的に説明できない待遇差は認められない。
実効性を確保するのは各企業の責任だ。企業の現金などの内部留保は18年度で463兆円に上る。格差を放置せずに、積極的に待遇改善に取り組むべきだ。
制度開始でコストが増えることに伴い、非正規労働者の雇い止めが起きることが懸念される。こうしたことがあってはならない。
新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、景気の先行き不安を待遇改善回避の言い訳にする企業も出ているようだ。しかし、それは通用しない。
手当や福利厚生と異なり、基本給の引き上げを進めるには昇給・評価の仕組みが必要だ。しかし、整備されていないことが多い。この点から改善していくべきではないか。
派遣労働者の待遇改善は、派遣料金の引き上げにつながる。派遣サービスを利用している企業は、応分の負担を引き受けるべきだ。
非正規労働者は既存の労働組合に加入していないことが多いが、労組が企業に適切な対応を要求していくことが大切だ。
同一労働同一賃金は欧州で主流だが、日本の法整備は立ち遅れている。着実な実施が求められる。