「働き方」法施行 安く長く、に決別を - 東京新聞(2019年4月4日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019040402000163.html
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「働き方」関連法が四月一日に施行された。長時間労働の是正や非正規労働者の待遇改善などの取り組みが始まる。労使共にその実現に努力してほしいが、規制の「抜け穴」には目を光らせたい。
長時間労働の是正は何といっても残業をどう減らすかだ。 
初めて罰則付きの上限が設けられる。適用は大企業は四月から、中小企業は来年四月からになる。
懸念されるのは働いているのに上限時間にひっかからないように、企業が働いていないことにする「残業隠し」だ。
日立製作所の関連企業で働く人がそう訴えたケースで、労働基準監督署が不払いになっている残業代を払うよう是正勧告を出した。
業務量減や人員増をせず残業時間を減らすことだけ企業から求められた結果、労働者が隠れた残業を強いられるとしたら何のための規制強化なのかと言いたい。
懸念はまだある。年間五日間の年次有給休暇の取得を企業に義務付けたが、忙しくて取得できないのに休んだことにされないだろうか。さらに、新たに規制される残業時間の上限には休日労働は含まれていない。休日も働かせられることにならないか不安がある。
こうした「抜け穴」を監視し防ぐため厚生労働省は監督行政の重い責任を負うと心すべきだ。
残業を減らすには労働時間の適切な管理が前提となる。これまでも企業側にその責任はあったが、管理職などは対象外だった。今回の法改正でパソコンの使用記録やタイムカードなどによる方法で、管理職も含め働く時間の把握が義務付けられた。
この点は前進だが、把握しない企業への罰則はない。実効性があるのか疑問は残る。
労働者も企業任せにせず自身がどれくらいの時間働いているのか、そこを意識することが残業を減らす第一歩になる。
非正規労働者の待遇改善は今後、順次企業に求められる。だが、既に一部の派遣会社が、無期雇用に転換した派遣社員通勤手当の支給と同時に時給を引き下げる対応を取っていた。
これでは待遇改善につながらない。正社員の待遇を下げて非正規の水準とそろえることも心配だ。
業務をよく見直し効率を図る。人材を育て業績に貢献してもらう。それは企業にも利益になる。働く人は安く長く働かせる使い捨ての労働力との考えを変えることが本来の「働き方改革」だ、と企業は肝に銘じてほしい。