障がい別の雇用格差 特性に応じた職場作りを - 琉球新報(2020年3月24日)

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人権尊重の観点から、障がいの種類によって差別されることはあってはならない。
全国の1788自治体を対象とした共同通信によるアンケートで、首長部局に知的、精神障がい者を1人も雇用していないと回答した自治体が少なくとも41%の731自治体に上ることが分かった。
短時間を含む一般職員の募集条件から知的または精神障がい者を除外する「門前払い」も全体の13%に当たる230自治体に上った。
障害者雇用促進法は、働く人の一定割合以上を障がい者とするよう義務付けている。国や地方自治体は2・5%、民間企業は2・2%の法定雇用率を定めている。
障がい者の雇用を巡っては、2018年に中央省庁で採用人数の水増し問題が発覚した。厚生労働省は法改正で行政機関への監督を強化し、同年12月には特定の障がい種別によって応募を制限しないよう自治体に通知した。
しかし自治体では知的、精神障がい者の雇用が進んでいない実態が浮き彫りになった。アンケートでは、募集条件から除外していた理由について「本人に見合った仕事がない」が最も多く、「周囲のサポートの仕方が分からない」「長時間の勤務が難しい」との回答が続いた。
背景には、身体障がいに比べて症状が見えにくく、体調の波も大きいため、働く環境を整えるのが難しいことがある。しかし雇用実績が全くない自治体もある。偏見に基づいて環境を整える努力を怠っているとの見方もできる。
障がい者雇用水増し問題以降、中央省庁は障がい者の雇用を進めた。厚生労働省は先月、昨年末の時点で国の全ての行政機関が法定雇用率2・5%を達成したと発表した。障がい種別では、精神障がい者が半数以上を占めている。
精神障がい者は2018年4月に雇用義務化の対象に加えられて以降、雇用は増える傾向にある。しかし全体で見ると、まだ少数派だ。
昨年6月時点の統計では、身体障がい者が民間企業で6割以上、自治体では8割以上を占めている。自治体より知的障がい者、精神障がい者の雇用割合が大きい民間企業では、障がい者雇用を目的とした特例子会社を設立し、支援環境を整えている例が多い。
精神障がい者は就職件数が伸びている半面、職場への定着が進まない側面もある。離職しないよう働きやすい環境をつくり、定着を支援することも不可欠だ。体の調子が悪いときに休みやすくしたり、障がいの特性に応じた幅広い業務を準備したりし、受け皿を広げることが肝要だ。職場の仕事内容や役割分担などを見直し、柔軟に対応する工夫も求められる。
仕事を持ち、働き続けられることこそ障がい者への自立支援だ。障がいの種別で差別される二重差別はあってはならない。社会全体で支援に取り組む必要がある。