<金口木舌>広がる多様な学びの場 - 琉球新報(2021年4月10日)

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数学の計算ドリルを、時間をかけて解いていく。5年ほど前、「珊瑚舎スコーレ」に通う70代の女性宅を訪ねた。女性は沖縄戦を体験した。戦後、家庭が困窮し中学校で学ぶ機会を逸した

▼「覚えるのは大変。でも楽しい」。生き生きとした表情が印象的だった。珊瑚舎はフリースクール、夜間中学校などを運営。小学生から高齢者まで幅広い世代が集う。今春、高等専修学校も開設した。多様で豊かな学びが生まれている
▼ここにも新たな学びの場が広がっている。知的障がいのある仲村伊織さんは、4度目の挑戦で真和志高校に合格した。「大きい学校(高校)、行く」と宣言し普通高校入学を目指してきた
▼仲村さんは校内にある中重度の知的障がい生徒を対象とした「ゆい教室」で学びつつ、音楽や美術などは他の生徒と一緒に授業を受ける。共生社会への一歩だ。家族や友人、支援者の支えがあり、教育行政も受け入れ態勢を整えた
▼公立小中校で学力テストが導入されて久しい。テストの時期になると各校は対策に追われる。だが、学力テスト偏重になってはいけない。点数だけでは測れない学力もあるだろう
▼珊瑚舎は4日、入学を祝う会を開いた。「学びというのは点数で表すことが難しい。その人の姿となって表れる学びを、みんなでつくっていきたい」。星野人史代表の言葉にヒントをもらったような気がした。