<金口木舌>置いてけぼりはいけない - 琉球新報(2020年2月5日

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小学校低学年のころ、同級生にO君という男の子がいた。「なかよし学級」と呼んでいた特別支援学級に席を置いていた。時々、同じ教室で授業を受け、給食の時間を過ごした。小太りで、はな垂れ小僧(こぞう)だった

▼時々いじめられることがあり、大粒の涙と鼻水を流して泣きじゃくった。 それでも、しばらくすると遊びの輪に加わり、仲間と一緒にはしゃいでいた。O君は人気者でもあった
▼同じく特別支援学級で学んでいたYちゃんという女の子もいた。笑顔がかわいかった。中学校卒業式の日、担任にすがりついて泣いていた姿が忘れられない
▼O君やYちゃんは今どうしているだろうか。いつの間にか視界から2人の姿が遠のいていった。いや、違う。遠のいたのは、こちらの方かもしれない。教室や運動場の片隅に2人を置いてけぼりにしたのではなかったか
▼障がいの有無を超え、共に学ぶインクルーシブ教育は目指すべき理想だ。「誰一人取り残さない」社会を掲げるSDGsは時代のキーワード。掛け声だけに終わらせてはならぬ。大事な人を置き去りにしてないか、身の回りを見渡そう
▼知的障がいのある仲村伊織さんの高校進学を巡って、県教育庁と保護者や支援者が12時間にわたって交渉した。双方とも学ぶ権利の重さを感じていよう。目指すべき理想ははっきりしている。今は産みの苦しみだと考えたい。