<金口木舌>声なき声を聞く - 琉球新報(2020年4月3日)

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殺人罪で懲役12年が確定し服役した元看護助手の西山美香さんの再審公判で、大津地裁が無罪判決を言い渡した。滋賀県の湖東記念病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外して殺害したとされていた

▼大西直樹裁判長は患者の死因は自然死の可能性が高いとした。「(担当刑事が)強い影響力を独占して供述をコントロールしていた」として、軽度の知的障がいがある西山さんの特性や恋愛感情を利用したと指摘した
▼取り調べで障がいなどにより反論がしづらく、誘導されやすい「供述弱者」は冤罪(えんざい)被害のリスクが高いという。専門家は弁護士の立ち会いなど、防止する仕組みの必要性を訴える。西山さんは「私を教訓に裁判所も変わらなければならない」と語った
▼8日まで「発達障害啓発週間」。知的障がい、発達障がいを含めさまざまな障がいへの理解が広がれば、誰もが人権を守られる優しい社会につながる
▼14年施行の「県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例(共生社会条例)」は、差別禁止を明記した。全県民があらゆる分野に参加できる共生社会を目指す
▼条例策定に向けた活動を主導し09年に道半ばで亡くなった新門登さんは「声なき声を聞く」ことの大切さを訴えた。声を上げられない弱者が取り残されていないか。私たちの社会に変えていかなければならない点は多い。