(政界地獄耳) アスリートの心情は理解できなくても… - 日刊スポーツ(2020年3月23日)

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★19日、国際オリンピック委員会IOC)のバッハ会長は新型コロナウイルスの感染が拡大する現状でも予定通りの開催を目指す東京五輪について「もちろん違うシナリオは検討している」と述べた。開催国・日本と開催都市・東京はいくつかのシナリオを抱えながら、その発表はもう少し後に延ばしたいと考えていたようだが、国際世論がそれを許さない状況だ。

★この問題について五輪メダリストでメンタルトレーニング指導士・田中ウルヴェ京はネットで「(1)アスリートのために『実施』(なにがなんでも実施しないとダメだから開催)。選手は『五輪に人生の全てをかけている』から。この言葉にどれだけの重みを感じてもらえるか。選手のほとんどは『誰にもこの重さはわかるはずはない』と思ってるでしょう。実際自分はわかってもらおうと思いません。五輪前の現役当時の異常な心情など、過去の日記を読むと自分ですら驚きます。(2)アスリートのために『延期』。アスリートはどんなに『今は体を鍛えていても』、循環器系に問題がある選手はいるから。選考会が行われていないから。国によって全く練習できてないから」。アスリートのためを考えると相反する解決策しかないから困っていると心情を代弁する。

★最近は1年間延期となった場合の経済損失は約6400億円、中止の場合は約4兆5000億円に上るとの試算も出始め、医療専門家やスポーツ専門家が五輪の延期や中止に対して国内経済の落ち込みや国際的不況を心配しながら発言する人たちが増えている。だが田中が指摘するようにアスリートや関係者はアスリートとしての悩みを議論して欲しい。医療関係者はその立場で語ればいい。そして政府や関係者はリスクをどう判断し、ウイルスに立ち向かうか、経済の落ち込みを防ぐか考えてくれればいい。そのために都知事五輪組織委員会があるのだから。政治はその結果責任をどう果たすかが問われるが、それ以外の専門家は今、最善の知恵を出し合う時で政治にならった忖度(そんたく)などしないでいいのではないか。(K)※敬称略