野田虐待死で判決 子どもを守る連携強化を - 毎日新聞(2020年3月21日)

https://mainichi.jp/articles/20200321/ddm/005/070/072000c
http://archive.today/2020.03.21-102233/https://mainichi.jp/articles/20200321/ddm/005/070/072000c

千葉県野田市で小学4年の栗原心愛(みあ)さんを虐待死させたとして、千葉地裁が父親の勇一郎被告に懲役16年の判決を言い渡した。
父親は暴力の内容をほぼ認めず、日常的虐待を否定したが、判決は母親の証言などから全面的に退けた。
裁判では、心愛さんが屈伸をさせられたり、大泣きしたりする様子を撮影した動画が証拠とされた。判決は「理不尽な支配欲から虐待を続け人格を全否定した」と批判した。
過去の虐待死事件の量刑は懲役10年前後が多かった。判決は今回、極めて悪質な事例と判断し、先例を上回る刑とした。虐待が後を絶たない中、厳しい姿勢で臨んだと言える。
亡くなる3カ月前、心愛さんは自分宛てに「未来のあなたを見たい。あきらめないで」と手紙を書いていた。あまりに痛ましい事件だった。
事件では、児童相談所自治体の対応に多くの問題点が指摘された。国や自治体の検証で、一時保護した児相が、危険性を十分に検討しないまま帰宅させた実態が判明した。
市教委は、被害を訴えた学校アンケートの写しを父親に渡していた。
事件後、子ども保護と保護者支援を担う職員を分けるなど、児相の機能強化に向け、児童虐待対策関連法が改正された。だが、浮き彫りになった課題への取り組みは不十分だ。
政府は、児相で虐待対応に当たる専門職の増員目標を掲げ、実際に増えつつある。しかし、対応する虐待件数の伸びに追いついていない。2018年度の虐待相談は、過去最多の約16万件に上った。
職員が数年で異動するため、知識や経験が蓄積されない状況も変わっていない。一時保護をする施設も都市部で定員超過が相次いでいる。
こうした状況を直ちに改善することは難しい。児相が虐待を見逃さないのは当然であるものの、児相だけに責任を負わせず、関係機関が連携していくことが欠かせない。
児相と警察が全ての虐待情報を共有する動きが各地で進む。法務省も法務局や検察などが児相を支援する仕組みを設けた。NPO法人など民間の力を活用する取り組みもある。
各機関が特性を生かし、協力して子どもの異常を早期に把握する。同じ悲劇を繰り返さないため、連携の枠組みを強化していくべきだ。