(政界地獄耳) 独裁的政治への危機感なさすぎ - 日刊スポーツ(2020年3月9日)

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★科学的根拠に基づいて対処しているのかと思ったら、政治的情報戦に戦術をシフトさせた政権。内閣官房国際感染症対策調整室、厚労省自民党広報が一斉にテレビ朝日羽鳥慎一モーニングショー」をターゲットに攻撃を始めた。首相官邸からの「事実と異なる報道には反論」せよとの指示だったようだが、その反論内容には「事実と異なる」虚偽情報が織り込まれていたので話は厄介だ。

★つまり反撃ではなく、情報操作や情報誘導を始めた部分もあるようだ。医療ガバナンス研究所理事長・上昌広は7日「某局に出演した時、『安倍政権の批判は避けて欲しい』と注意されました。上層部が嫌がるそうです」と専門家からも意見より忖度(そんたく)が求められているとSOSが出ている。最近は「首相は頑張っているが反対勢力はなんでも批判するのはおかしい」というネットの声もある。立憲民主党副代表・蓮舫は「全ての番組をチェックしているのか。その体制人員をコロナ感染症対策のために厚労省への支援人員に回すべきだ」とピントの外れた批判をしているが、ポイントはそこではない。

★首相・安倍晋三は2日の参院予算委で新型コロナウイルス対策を議論した「連絡会議」について「どのような議論をしたかはお示しできる」としたが議事録がないことが判明している。この調子で場当たり的に科学的よりも政治的に特定メディアへの攻撃、記者会見でもやらせが発覚するなど情報操作が先週から始まり、今週国会では新型コロナウイルス特措法審議が始まるが、そこには首相が熱望する緊急事態宣言が含まれ、極めて甘い条件で立憲民主党と国民民主党は合意する方向だ。国民の自由と人権を首相権限で抑え込める法案に賛成する野党両党の危機感のなさにはあきれる。独裁的政治が始まることへの認識がなさすぎはしまいか。歯止めや条件を付けているなどとのんきなことを言う野党の活動の制限すら在り得ることが、一連の「官邸の指示」から読み取れないだろうか。コロナウイルス対策の特措法は国民の生命財産を守るためではなく、自由と人権を剥奪する可能性がある。日本は今、その分岐点にいる。(K)※敬称略