閣僚答弁の混乱 「桜」私物化こそ本質だ - 東京新聞(2020年2月11日)

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公文書管理を所管する北村誠吾地方創生担当相の答弁が混乱している。野党側が指摘する閣僚の資質欠如に加えて、首相による「桜を見る会」の私物化疑惑が背景にあることを忘れてはならない。
きのうの衆院予算委員会は開会が約一時間ずれ込むなど、冒頭から荒れ模様となった。その原因は北村氏の答弁混乱である。先週の予算委で、北村氏は桜を見る会の文書管理を巡り、担当閣僚でありながら答弁に窮し、野党側の反発で質疑が打ち切られた。
きのうの予算委で与党側は、北村氏に代わって答弁する官僚の出席を、野党側の反対を押し切って認めた。しかし、そもそも国民の代表で構成する国会は、議員同士が議論する場ではないのか。
かつて国会では「政府委員」として出席、答弁する官僚が幅をきかせていた。これを議員同士の議論の場にしようとしたのが「平成の政治改革」である。政府委員は廃止され、代わりに「細目的または技術的事項」に限って答弁する政府参考人が設けられた。
官僚答弁で事足りるのなら、大臣に存在意義はない。潔く辞表を提出したらどうか。
野党側は、辞任した菅原一秀経済産業相河井克行前法相に続く「閣僚の資質」の問題と位置付け、攻勢を強めている。
閣僚としての適性は問われて当然だが、北村氏の答弁混乱の背景にあるものを見過ごすわけにはいかない。それは、安倍晋三首相が「桜を見る会」に地元の支援者らを多数招き、私物化したのではないか、との疑惑である。
例えば政府が昨年国会に提出した約四千人分の「桜を見る会」の推薦者名簿。内閣府は「内閣官房内閣総務官室」の部局名を白く塗りつぶした。北村氏は野党の追及に「刑法上の改ざんではない」と答弁したが、根拠について「私の思い」と述べるなど、混乱した。
内閣総務官室は「総理枠」を取りまとめる部局だ。白塗りには、首相の関与がなかったかのように装う意図があったのではないか。
桜を見る会」を巡っては首相も地元支援者の参加は「募っているが募集はしていない」などと答弁が迷走している。私物化を否定するから無理が生じる。
安倍首相が近しい者に便宜を図り、問題視されると公文書を廃棄したり、改ざんしたりするのは森友・加計学園を巡る問題と同じ構図だ。公文書を所管する北村氏の答弁混乱は論外だが、問題の本質にこそ目を向ける必要がある。