https://mainichi.jp/articles/20200129/ddm/005/070/088000c
http://archive.today/2020.01.28-231214/https://mainichi.jp/articles/20200129/ddm/005/070/088000c
衆院予算委員会の審議が2日間行われた。安倍晋三首相が一問一答形式の答弁に立ったのは昨年11月の参院予算委以来、2カ月半ぶりだ。
「桜を見る会」をめぐって批判されているのは、首相自身の事務所による「公私混同」である。
首相は「私の事務所が幅広く参加希望者を募り、推薦を行ってきた」ことは認めた。だが、自身の認識を問われると「募集しているという認識ではなかった」、招待者が年々増加したことについても「そういう認識はなかった」と答弁した。
本人に認識がなければ公的行事の私物化に当たらないと言いたいのであれば、苦しい釈明だ。
「歴代首相の時も地元の方々がたくさん来ていた」という答弁も論点をすり替えている。問題は歴代内閣で1万人規模だった参加者が安倍政権下で8000人も増えたことだ。
その原因が「長年の慣行」と「招待者の基準が曖昧だった」ことにあるという主張は責任転嫁だ。
桜を見る会への招待が自民党総裁選や地元の地方選挙などでの支持拡大に利用されたとも指摘されている。そうでないと言うなら、疑念を晴らす責任は首相自身にある。
しかし、首相は事務所から推薦した支持者らの名簿は「廃棄した」と繰り返した。そうだとすれば、後援会から毎年、誰が参加したかをどのように管理しているのだろう。不自然だと言わざるを得ない。
首相の無理な説明に合わせようとするから政府の公文書管理がゆがんでいく。内閣府と内閣官房が管理すべき招待者名簿を廃棄するのも問題だが、コンピューターに残る作業履歴の確認すら拒むのは異常だ。
菅義偉官房長官は「国家機密にかかわる」と答弁した。名簿を廃棄した記録の有無が政府を挙げて隠すような機密だろうか。
野党が質問時間の多くをこの問題に費やすことに対しては、新型肺炎対策をはじめ、もっと大事な政策課題があるとの批判もある。
確かに、誰を招待したのか、名簿を本当に捨てたのかの議論の繰り返しにはうんざりする。泥仕合に持ち込んで、政権の不祥事をうやむやにしようとしているのではないか。
自ら真相を説明しようとしない首相の姿勢が混乱を広げている。