首相のやじ 政策論争の場なり得ない - 琉球新報(2020年2月16日)

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国会審議はいつから「ディベートの悪い見本」になったのだろうか。安倍晋三首相が意味の通らない反論を繰り返し、議員の発言を封じる非常識なやじを飛ばした。
立法府に対する侮辱であり、断じて容認できない。与党も問題意識を持つべきだ。首相は真摯(しんし)に反省し、国政のチェック機能を果たすという国会の役割を尊重するべきである。
12日の予算委員会で、立憲民主党辻元清美氏の質疑が終わった直後に安倍首相が「意味のない質問だ」とやじを飛ばした。辻元氏は「桜を見る会」や森友・加計問題を取り上げ「タイは頭から腐る。社会、国、企業の上層部が腐敗していると残りもすぐ腐る。ここまできたら頭を代えるしかない」と首相を批判した。
さらに、続く立民の議員にやじを確認されて「罵詈雑言(ばりぞうごん)の連続で、私に反論の機会が与えられなかった。ここは質疑の場だ。これでは無意味じゃないか、と申し上げた」と開き直った。
そもそも桜を見る会を巡る一連の疑惑について、首相はまともに答えていない。「募ってはいるが、募集していない」などの珍回答はその象徴だろう。首相の事務所が桜を見る会への参加を募る文書を地元有権者に送っていたことを追及されると、こうごまかそうとした。
辻元氏の発言もこうした首相の対応を批判したものだ。「罵詈雑言」ではなく、当を得ている。首相が国会を「質疑の場」と言うならば、はぐらかしやごまかしなどをせず、質疑と呼ぶにふさわしい答弁をしてほしい。
桜を見る会も森友・加計問題も自身に近しい人への便宜供与の疑いは免れない。さらに首相答弁のつじつま合わせでもするように公文書の廃棄や改ざんが行われた。
多くの国民は首相の説明に納得していない。共同通信の1月の世論調査でも「桜を見る会」の疑惑に関して、安倍首相は「十分説明していると思わない」とする回答は86・4%に上った。野党が追及するのは当然だ。
予算委員会では閣僚の答弁はしどろもどろで、論戦の仕切り役のはずの委員長は職責を果たしていない。公文書管理に関する北村誠吾地方創生担当相も曖昧な答弁を繰り返し、質疑がかみ合わない。棚橋泰文委員長は質問者が首相の答弁を求めているのに他閣僚に答弁させたりと政府寄りの差配が目立つ。
首相は17日に衆院予算委の集中審議で自らのやじについて見解を表明するが、議会制民主主義を守るためにも国会には厳しい対応を求めたい。
首相にまつわる疑惑以外にも国政の課題は多い。新型コロナウイルスなどの感染症対策や日米安保の問題、辺野古新基地建設に関して議論するためにも、首相は混乱の源は自身にあると猛省すべきだ。
「意味のある」国会にする責任は首相にある。