桜名簿の再調査 個人情報は盾にならない - 信濃毎日新聞(2020年1月31日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200131/KT200130ETI090006000.php
http://archive.today/2020.01.31-011507/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200131/KT200130ETI090006000.php

時間を稼ぎ、事実を解明しないつもりか。
安倍晋三首相の国会予算委員会の「桜を見る会」を巡る疑惑に関する答弁である。
功績があった人を公金で慰労する会だ。首相が後援会関係者を大勢招待し、支持拡大に利用した疑惑がある。
首相は招待者について意見したことを認めたものの、最終的には「内閣官房および内閣府が取りまとめをした」と述べた。自身の推薦が最終決定ではないため、公選法に抵触しないという主張だ。
異なる事実が判明している。政府が招待状を発送する前に、安倍事務所が招待決定を通知する文書を推薦者に送っていた。事務所の推薦が政府決定と同一なら、私物化の疑いが深まる。
首相は事務的な問題と釈明する一方、事務所の推薦者名簿を破棄したとして調査に応じない。公選法違反の疑惑があるのに通用しない対応だ。事務所の推薦と政府決定の関係を徹底的に調査しなければ疑惑は晴れない。
首相は招待基準が曖昧で歴代内閣も地元後援者を招待していたとし、自身の私物化を否定している。曖昧な基準を利用し、地元招待者を急増させたのは首相だ。責任逃れの言い訳である。
マルチ商法の疑惑があったジャパンライフ元会長を首相が招待したとの指摘は「個人情報のため回答を控える」とするばかりだ。
元会長は招待状を誘客に利用し被害者が出ている。招待が虚偽なら厳重に抗議し、責任を追及するべきだ。首相招待が事実なら道義的責任は免れない。個人情報を盾に調査を拒否することは、被害者や国民の理解を得られまい。
きのうの予算委では、参院自民党が所属議員から推薦者を募った際、情報公開法に基づき「名簿全体が公開されることもある」と通知していたことも分かった。
菅義偉官房長官衆院予算委で、首相主催の会合で参加者が確認できないのは「桜を見る会」だけだとも明言している。なぜ「桜を見る会」だけが公開されないのか。調査拒否は筋が通らない。
各省庁の推薦名簿の保存期間が3年以上なのに、内閣府だけが個人情報を理由に「1年未満」とし、「遅滞なく廃棄」しているのも問題だ。
公文書管理法は、事業の検証に必要な文書の保存期間を原則1年以上とするよう義務付けている。
政府は都合が悪い文書を、法を悪用して廃棄し、再調査しない言い訳に「個人情報」を使っている。政府に徹底調査を求める。