[大弦小弦]「それなら結婚しない」は議論の放棄 - 沖縄タイムス(2020年1月29日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/527901
http://archive.today/2020.01.29-065319/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/527901

2011年から3年間、県議会を担当した。任期の前半は、与野党普天間飛行場の県外移設で一致していた。議場はおおむね和やか。やじにもどこか愛嬌(あいきょう)があった

▼約40の質問をした共産県議を、自民県議が「非常識だぞ」とやじった。すっかり忘れたのか、後に自分は約60も質問した。共産県議から「あなたの方が非常識」とやじり返され「オチがついちゃいました」と苦笑していた

▼こちらは笑えない。国会で選択的夫婦別姓の質問に「それなら結婚しなくていい」とやじが飛んだ。野党は自民の杉田水脈(みお)氏だと指摘している

▼別姓への賛否を表明するなら建設的だ。「それなら結婚しない」では、議論の放棄だろう。そもそも別姓は強制でなく、選択制なのだが。報道陣が事実確認を求めても、杉田氏は携帯電話で話してばかり。言論の府で働く身と思えない

▼杉田氏は18年、雑誌への寄稿で性的少数者(LGBT)を「子どもをつくらない。つまり『生産性』がない」と規定した。人の価値は、子どもを産むかどうかで決まるわけではない

▼慣れ親しんだ姓に、結婚後も誇りや愛着を持つ人がいるだろう。女性が男性の姓に合わせる風潮に、申し訳なさも感じる。憲法24条は夫婦の権利が平等だと保障している。与党は改憲より前に、同姓を強いる民法750条の改正を真剣に考えてはいかがか。(吉田央)