センター試験 積み残した大きな課題 - 朝日新聞(2020年1月22日)

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大学入試センター試験が31年の歴史に幕を下ろした。高校や大学から「改良を重ね、思考力を問う良問が増えた」と、一定の評価を受けた試験だった。
思考力のさらなる重視をかかげて「共通テスト」に切り替わるが、英語民間試験と記述式問題の導入をめぐる迷走から、なお行方が定まっていない。まずここをはっきりさせ、受験生の不安を解消する必要がある。あわせて中長期的な視点から、あるべき入試制度について検討を深めるべきではないか。
文部科学省の審議会などでの議論をふり返ると、当初指摘された二つの問題が積み残されていることに気づく。
一つは試験の肥大化だ。センター試験は私大に門戸を広げ、各大学が科目を自由に選べる方式を採った。参加数は6倍近い858校に膨らみ、多様な要望に応えるため、科目数も18から30に増えた。06年からは英語のリスニングも加わった。
その結果、科目選択が複雑になりすぎ、試験監督が問題冊子を配り間違える事故も起きた。今回の記述式導入などの頓挫は、共通入試に何もかも詰め込もうという考えの限界を露呈させた。制度が難解になるほど、塾で助言・指導を受けられる生徒が有利になるのも、見過ごすことのできない欠点だ。
センター試験の後継の姿を議論する過程では、教科や科目の垣根にとらわれない横断型試験とするアイデアも出ていた。そうした案も含め、主要教科の土台の力を測る簡明な試験の形を、改めて模索してはどうか。
肥大化の背景には、個別入試の運営が各大学の重荷になっている事情もある。共通テストの出直しの論議では「記述式などは個別入試で」との意見が出ている。それには国による各大学の入試体制充実への支援や、大学間の連携を真剣に検討する必要があろう。
積み残されたもう一つは、基礎学力のない学生の増加だ。定員だけみれば大学全入の時代を迎え、「学力不問」の学校推薦や自己推薦の入試も問題になってきた。学び直しの時間を設けるなど大学側の負担は大きく、本来の教育に支障が出ている。
文科省は来年から、推薦入試の際、小論文や口頭試問などによる学力確認の実施を義務づける。高校にも、英数国の民間検定なども使って基礎の定着を図るよう求めている。一方、推薦入試にも使える基礎学力テストの構想は、高校の序列化を招くといった懸念から、見送られた経緯がある。
大学の学びに必要な力を測る公平な入試制度をいかに作るか。成果の検証と結果を踏まえた不断の見直しが求められる。