https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020011502000151.html
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韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が年頭記者会見で、懸案である元徴用工問題の解決に向け、日本政府に協力を求めた。時間的余裕はない。関係悪化を食い止めるために、日本政府も前向きに関与してほしい。
この問題については、昨年末に実現した日韓首脳会談で、「対話による解決」で一致したが、残念ながら具体的な進展はなかった。
その後、徴用工を巡る訴訟の弁護団などが、日韓合同の協議会を創設することを提言した。
すでに、日韓の企業、市民の自主的な募金で救済する法案が韓国国会に提出されているものの、被害者の声が反映されていないとの批判があるためだ。
思い出すのは昨年の同じ年頭会見のことだ。文大統領は日本の歴史認識を批判し、関係悪化の引き金になった。今回は、発言に関係改善への意欲が読み取れた。
文大統領はまず、「最も重要なことは被害者の同意を得ることだ」と述べ、協議会に参加する意向も示唆した。
ただ、韓国政府としてどういう解決策を持っているのかには触れず、救済法案にも言及しなかった。物足りなかった部分だ。
これまでの徴用工に関する韓国政府、国会、弁護団の対応はバラバラという印象が否めない。
隣国日本について「協力関係を未来志向的に進化させる」(文大統領)というなら、「司法の判断」と逃げず、方向性を取りまとめ、日本側に提示してほしい。
会見の中で文大統領は、日本側が輸出規制の撤回をすれば、協議が進むとの認識を示した。
これは順番が違うのではないか。適切な措置だったとはとても言えないが、日本の輸出規制は徴用工問題に対する警告の意味だった。徴用工問題での進展があれば、自然に解決するはずだ。
一方、日本側は、韓国人の個人請求権問題は一九六五年の日韓請求権協定で解決済み、との姿勢を全く変えていない。協議会についても否定的だ。
徴用工訴訟の被告である日本企業の資産売却は二月にも行われるとの見方がある。そうなれば、日韓関係への決定的な打撃になりかねない。
今年は東京五輪の年でもある。韓国からも多くの観光客や政府高官の訪日が見込まれるのに、トラブルを抱えたままでいいのか。加えて北朝鮮情勢も不安定だ。
日本政府は、「韓国内の問題」だとして傍観せず、文大統領の意欲に応えるべきだろう。