首相と文氏が会談 対話積み重ね信頼回復を - 毎日新聞(2019年12月25日)

https://mainichi.jp/articles/20191225/ddm/005/070/059000c
http://archive.today/2019.12.25-010738/https://mainichi.jp/articles/20191225/ddm/005/070/059000c

安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が1年3カ月ぶりに会談した。昨年10月に韓国最高裁が元徴用工問題で日本企業に賠償を命じて以来、初めてだ。
安倍首相は、韓国政府の責任で元徴用工問題を解決するよう求めた。文氏は、日本による対韓輸出規制を撤回すべきだとの立場を改めて示した。両氏とも従来の原則的立場を繰り返すにとどめた。
とはいえ、双方とも相手側に配慮する姿勢も見せた。首相は記者会見で、韓国が国際法違反の状態を是正すべきだという表現を避けた。文氏は、日本側の輸出規制の一部緩和を評価すると述べた。
両首脳が顔を合わせ、対話によって懸案の解決を図ろうという認識で一致した意味は大きい。
北朝鮮問題では、制裁の維持を求める日本と、南北協力を重視する韓国の間で足並みが乱れていたが、両国の連携を確認した。北朝鮮が周辺国との緊張を再び高めている局面だけに、一歩前進だ。
今後も首脳同士が対話を重ね、信頼回復につなげていくべきだ。
ただし、本格的な関係改善のためには、元徴用工問題への対応が欠かせない。
韓国国会では、日韓両国企業などから寄付金を募る形で解決を図る法案が提出された。この案のポイントは、日本側に強制的な賠償ではなく自主的な拠出を促す点にある。日韓請求権協定に反しないよう、日本の立場を考慮したものだ。
韓国の大統領府の中には、日本企業の参加が担保されていないとして法案に否定的な見方がある。元徴用工問題は、韓国が主体的に解決に動くべき課題だという自覚を持つ必要がある。
政府間の対立により、両国の国民感情は極めて悪化した。内閣府世論調査で、韓国に「親しみを感じる」との回答は26・7%に落ち込んだ。1978年の調査開始以来、最も低い。韓国では、日本製品不買運動日本旅行の見合わせが半年近く続いている。
両首脳は、スポーツや人的交流は重要だというメッセージを発した。今回の会談が、国民レベルにまで広がった相互の不信感を和らげる契機となることを期待したい。