[大弦小弦]台湾総統選 沖縄でも民意尊重を - 沖縄タイムス(2020年1月15日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/521893
http://web.archive.org/web/20200115013140/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/521893

政治的な大ニュースがあると、大手新聞の論調が分かれる。辺野古埋め立てを巡る昨年の県民投票もそうだった。毎日は「ただちに埋め立てをやめよ」と政府に警告。読売は逆に「辺野古移設の意義を粘り強く訴えていく必要がある」。基地建設の進展を求めた。
安倍政権に朝日・毎日・東京が批判的、読売・産経が肯定的という違いもある。日経は中間的な存在だろうか。そんな大手紙の足並みが、台湾総統選できれいにそろった。
対中独立派の蔡英文氏が、史上最多得票で再選された。「民意が出した答えは重い」(朝日)、「蔡氏を選んだ民意を尊重したい」(産経)。どの社説も選挙結果の重視を求めている。
民主的な選挙だから、各社の主張はごもっとも。沖縄も国政選挙、知事選、県民投票という民主主義の手法で、新基地反対の民意を示してきた。なぜ一致しないのだろうか。
総統選の伏線は、香港の若者たちによる反中国デモ。台湾にも波及し、蔡氏の追い風になった。辺野古の抗議行動に批判的なメディアも、香港のデモには好意的だ。背景は中国脅威論だろう。
覇権主義的な姿勢を強める習近平国家主席が目に余るから、中国に抵抗する市民へエールを送る「敵の敵は味方論」に見える。純粋に民意を重視するなら、沖縄へのまなざしも民意尊重に帰結するはずなのだが。(吉田央)