日韓首脳会談 意思疎通を続けたい - 東京新聞(2019年12月25日)

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率直に意見交換できたことだけでも大きな成果だった。日韓首脳の正式な会談が一年三カ月ぶりに実現した。まだ課題は多いものの、意思疎通を続ければ、対立を打開する道も見えてくるだろう。
安倍晋三首相が冒頭、日韓関係改善に意欲を示すと、文在寅(ムンジェイン)大統領も「懸案解決には率直な対話が必要だ」と応じるなど、比較的穏やかなムードだった。
関係悪化の出発点となった元徴用工をめぐる問題では、双方が基本的立場を主張し合っただけで終わった。時間をかけ、溝を埋める努力を続けるしかない。
首脳会談が実現したのは、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の失効が回避され、元徴用工救済法案が韓国国会に提出されたことがある。
これを受けて日本側も、七月に輸出を厳しくした半導体材料のレジスト(感光剤)について、事務手続きを一部緩和した。
事態が動き始めた背景には、双方の国民が対立の解消を望んでいることがある。日韓の政府も、そのことを感じているはずだ。
残念ながら、まだ今後の展望は見えない。韓国の救済法案は、日本の政府、企業の法的責任や謝罪を、明確な形で求めておらず、原告の一部が反発している。
また法案成立後に設立される基金から慰謝料を受けなければ、訴訟を継続できる点が「抜け穴になる」とも指摘されている。
韓国政府も司法判断を重視するとして、救済案に冷ややかだ。しかし、被告企業の資産が売却されれば、せっかく実現した対話ムードは吹き飛んでしまう。
安倍首相は会談前、「国と国との約束は守ってもらわなければならない。韓国がきっかけをつくってほしい」と述べた。
韓国の司法判断が、一九六五年の日韓請求権協定に背いている。韓国が責任を持って解決してほしいと言いたいのだろう。
しかし、朝鮮半島から日本に来た若者たちが過酷な労働を強いられたことには数多くの証言があり、日本の裁判所も認定している。
問題解決に役立つのなら、日本政府や企業が戦前の動員政策について過ちを認めることも検討に値するのではないか。
北朝鮮は、米国との非核化協議が進展しないため挑発姿勢を強めている。米国、中国も含めた連携が欠かせない。
こうした状況に対処するため、日韓両首脳には大局に立った判断を求めたい。