沖縄辺野古基地 工事を直ちに中止せよ - 信濃毎日新聞(2019年12月27日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191227/KT191226ETI090008000.php
http://archive.today/2019.12.27-101439/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191227/KT191226ETI090008000.php

無理押しもここに極まれり、だ。
沖縄県の米軍辺野古基地建設を巡り、政府が工期を当初想定の5年から9年3カ月に延ばす計画の見直し案を公表した。
飛行場整備を含む全工期は12年となり、その分、米軍普天間飛行場の返還が大幅にずれ込む。工費も従来の見積もりの3倍に近い9300億円としている。
日本の安全にどう役立つかも定かでない基地を、沖縄の人々の反対を無視してまで造る必要があるのか。工事の中止を改めて安倍晋三政権に求める。
工期延長と費用増大は、辺野古近海で軟弱地盤が見つかったことによる。マヨネーズ並みに軟らかい場所を含む海底に7万本以上のくいを打ち込むという。
日米両政府は1996年、普天間を日本に返し、代替施設を用意することで合意した。米軍基地にヘリポートを確保する内容だった代替施設は、普天間にもない機能を備えた大規模な「新基地」計画にすり替わった。
基地負担に苦しむ沖縄の人々は日本復帰後、新基地建設を阻んできた。辺野古に対しても、選挙や県民投票で反対の民意を繰り返し示している。
政府は法解釈をねじ曲げてまで工事を強行している。昨年12月には土砂投入を始めた。政権幹部が言う「強固な日米同盟を示す」ために自治をないがしろにしたのでは本末転倒だろう。
今回の見直し案についても「沖縄が反対しており、予定通り進まないのもやむを得ない」との声が政府内から上がっている。責任をなすりつけるような言いざまは聞き苦しい限りだ。
安倍政権は「普天間の危険性除去のため辺野古基地は必要だ」と主張する。政府と沖縄県は「2014年2月から5年以内」に普天間の運用を停止することで合意している。既に期限は過ぎた。危険だと言うのなら辺野古基地とは切り離し、米国に運用停止を申し入れてはどうか。
菅義偉官房長官は先日、日本への返還で米側と合意している那覇軍港を視察し「沖縄県の経済の起爆剤として高い潜在力を持っている」と述べた。この返還も浦添市への移設が条件となる。
同じ県内で古い米軍施設を新しい施設へと造り替える。安倍政権の掲げる「沖縄の基地負担軽減」は空手形にすぎない。
多額の税金の使途が絡む。本土の私たちも自らの問題として、辺野古の計画を見つめ直したい。