22年普天間返還困難 たちの悪い責任転嫁だ - 琉球新報(2018年12月18日)

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政府が何度も約束を破るわけを見定める時だ。
岩屋毅防衛相は2022年度とされる米軍普天間飛行場の返還は「困難」と述べた。名護市辺野古への移設に伴う埋め立ての承認を県が撤回したことなどを理由に挙げた。
9月の知事選で県の撤回を支持する玉城デニー知事が誕生した。いわば撤回は沖縄の民意である。
そもそも県民に辺野古移設反対の民意が根強いのは、新たな米軍施設の建設は基地の県内たらい回しにすぎないと認識しているからだ。それを理解せずに県民が納得しない「負担軽減策」を「唯一だ」と押し付けてくる政府に責任がある。その自覚なしに県の反発を返還が遅れる理由にするのは悪性であり、県民への責任転嫁も甚だしい。
1996年の普天間返還の日米合意以来、沖縄は何度も県内移設反対の民意を示してきた。しかし政府は県内移設にこだわり、返還時期の約束をほごにしてきた。96年の返還合意の際は5〜7年後、2006年の米軍再編では14年の代替施設完成後、13年には22年度またはその後だった。仲井真県政が埋め立てを承認した際に約束した19年2月までの運用停止も困難という。近年は県の反発へのいら立ちからか「辺野古移設か、普天間固定化か」というどう喝まがいの二者択一を迫っている。
こう見ると、政府の真の狙いが浮かび上がる。普天間の危険性除去は二の次で、軍港や弾薬庫といった普天間飛行場にない機能を備えた新基地建設を最優先することだ。
岩屋防衛相は辺野古移設は「日米同盟のためではない。日本国民のためだ」とも述べた。日本の防衛の最前線は南西地域だと指摘し「この地域の抑止力を減退させるわけにはいかない」と強調した。
「抑止力」の名の下で重視しているのは県民の生命や人権よりも、自衛隊や本島北部のヘリパッドなども含めた基地のリニューアル(再開発)である。防衛相の言う「国民」に県民は入っていないに違いない。有事には敵から真っ先に標的にされ、平時では事件・事故、騒音などで命や人権が侵害される。「抑止力」のために県民に犠牲を強いる構造的差別を可視化する発言であり、植民地主義の発想だ。
新基地が欲しいのは米国よりむしろ日本政府だということも鮮明にした。何が何でも新基地を造りたい政府にとって「危険性の除去」は本気ではなく空手形の疑いがある。県の試算では工期はあと13年もかかる。「抑止力」のためにその間、普天間の危険を放置するのはあまりにも無責任だ。
こう考えると、辺野古移設か、普天間固定化かという二者択一論は「宗主国による分断策」と見なした方が分かりやすい。県民を分断することで辺野古移設を進めやすくする狙いが透けて見える。県民が一致して、県内移設を条件としない普天間返還を強く求めることが大切だ。