防衛費最大に 膨張に歯止めかけねば - 東京新聞(2019年12月21日)

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二〇二〇年度の防衛省予算案は五兆三千百三十三億円となり、六年連続で過去最大を更新した。安倍晋三首相の下で防衛費は一転、増え続けている。際限なき膨張には歯止めをかけねばならない。
防衛費は冷戦終結後、減少傾向が続いていたが、安倍首相が政権復帰後に編成した一三年度に増額に転じ、一五年度以降は過去最大を更新し続けている。
防衛省は安全保障環境の急速な変化に対応したり、宇宙、サイバー、電磁波といった従来とは異なる領域での防衛力を整備するための予算と説明している。
日本を含むアジア・太平洋地域では、北朝鮮や中国が軍備を増強するなど、緊張緩和が進んでいるとは言い難い。周辺情勢に応じて防衛力を整える必要はある。
ただ、安倍政権による防衛力整備が、適切かつ節度を持って行われていると言えるのだろうか。むしろ、米国から必要以上に高額の防衛装備を買い込んだり、憲法九条で定められた「専守防衛」の範囲を逸脱する形で、防衛力整備が進んでいるのではないか。
例えば地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」だ。レーダーや本体の取得は二基で二千四百億円余りと高額で、維持・運用費やミサイル発射装置、用地取得費を含めればさらに膨れ上がる。二〇年度予算案には関連経費百二十九億円を計上したが、地元の反対で配備地すら決まっていない。
自衛隊はすでにイージス艦の迎撃ミサイルと地対空誘導弾による迎撃態勢を整えている。さらに巨額の投資をして、それに見合う効果があるのか、甚だ疑問だ。
ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」の事実上の空母化費用と、同艦で運用するF35B戦闘機六機分七百九十三億円も計上された。太平洋の防空強化が理由だが、そもそも日本の防衛に必要不可欠なのか。「攻撃型空母」の保有憲法上も認められていない。
イージス・アショアやF35B戦闘機など米国製の防衛装備は、米国が価格や納期の設定に主導権を持つ対外有償軍事援助(FMS)で調達され、防衛費を押し上げる大きな要因となっている。
トランプ米大統領は米国製武器の購入拡大や米軍駐留経費の負担増を求めている。巨額の防衛装備購入の背景に、米政権からの購入圧力があるのではないか。適切かつ節度を持って行われるべき防衛力整備が、米政権への配慮で歪(ゆが)められてはいないか。国会論戦を通じた徹底的な検証が必要だ。