膨らむ防衛費 聖域化せず、精査せよ - 東京新聞(2019年1月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019010802000166.html
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防衛費が安倍内閣の下、七年連続で増え、過去最大を更新している。自衛隊に必要な装備なのか、専守防衛に徹する日本による保有が妥当なのか、今月下旬召集予定の通常国会での精査が必要だ。
二〇一九年度当初予算案の防衛費(米軍再編関係経費を含む)は五兆二千五百七十四億円で、一八年度当初比1・3%増。安倍内閣が編成した一三年度以降、増額は七年連続で、五年連続で過去最大の更新となった。
安倍内閣は防衛費を増額する理由に、安全保障環境の変化が、格段に速度を増していることを挙げる。
新しい防衛大綱は、中国による軍事力の急速な強化や、北朝鮮の核・ミサイル能力に本質的変化がないことに言及し、中期防衛力整備計画は一九〜二三年度の防衛費を総額で最大二十七兆四千七百億円程度とした。前の五年間に比べ二兆八千億円もの増加だ。
政府が節度ある防衛力整備に努めた上での必要額なら国民も納得できるのだろうが、詳細に見ると妥当性が疑われる項目も多い。
地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(二基千七百五十七億円)や長射程の新型ミサイル(七十九億円)の調達経費、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」型での戦闘機運用に向けた調査費(七千万円)はその一例だ。
昨年の米朝首脳会談を受け、北朝鮮からミサイルが飛来する可能性は低くなったと政府自身が判断する状況下で、巨費を投じ、地元の反対を押し切って地上イージスを整備する必要性があるのか。
長射程ミサイル導入は「敵基地攻撃能力」、いずも型での戦闘機運用は「攻撃型空母」の保有につながる。いずれも憲法九条の「専守防衛」を逸脱するものだ。違憲の疑いのある装備品の調達を認めるわけにいかないのは当然だ。
そもそも、いずも型での戦闘機運用は現場からの要請がなく、安全保障上の切迫性に乏しい。
一九年度予算にはF35戦闘機六機の購入費六百八十一億円も計上された。政府は百四十七機体制を目指すことを決めており追加取得費は一兆二千億円に上る。
旧型戦闘機を置き換える必要があるにせよ、高額の米国製武器を大量購入する背景に、貿易赤字削減を迫るトランプ米大統領の歓心を買う狙いがあるのではないか。
安倍内閣で急増し、納期や価格で米側の裁量が大きい調達方法の対外有償軍事援助(FMS)を含め、国会で徹底議論すべきだ。防衛費を聖域化してはならない。