防衛費の拡大 米兵器購入の重いツケ - 朝日新聞(2018年12月23日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13824229.html
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安倍政権による2019年度の当初予算案で、防衛費が5兆2574億円に膨らんだ。今年度当初より1・3%増え、5年連続で過去最大だ。
来年度は「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の初年度にあたる。中国や北朝鮮の脅威に軍事的に対抗する姿勢が鮮明になり、米国製兵器の購入に拍車がかかっている。
特に目立つのが、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の整備費1757億円と、F35戦闘機6機の購入費681億円だ。F35は147機体制をめざしており、将来的な追加取得費は約1兆2千億円にのぼる。一部は、空母化される「いずも」型護衛艦での運用が想定される。
陸上イージスにしろ、空母にしろ、巨額の費用に見合う効果があるのか、大きな疑問符がつく。それでも安倍政権が導入に突き進むのは、トランプ米大統領が掲げる「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」に呼応してのことだろう。
日米の通商交渉をにらみ、米国の貿易赤字削減に協力する姿勢をアピールする狙いもありそうだ。しかし、軍拡競争や地域の不安定化につながりかねない兵器の大量購入で、トランプ氏の歓心を買うような振る舞いは、およそ見識を欠く。
見過ごせないのは、米政府から直接兵器を買う有償軍事援助(FMS)が、安倍政権で急増していることだ。来年度は過去最大の7013億円。今年度に比べ、一気に3千億円近く増えた。政権発足前の12年度の1380億円の約5倍となる。
こうした高額な兵器の代金は、複数年にわたって分割払いされる。後年度負担は将来の予算を圧迫し、なし崩し的な防衛費増につながる恐れがある。来年度の契約に基づき、20年度以降に支払われる後年度負担は2兆5781億円。実に年間の防衛予算の半分に迫る規模だ。
中期防は、次の5年間の防衛費を27兆4700億円程度とした。効率化、合理化を徹底することで2兆円を節減し、実際に投じる額は25兆5千億円程度を「目途とする」としている。
ただ、あくまで「目途」とされており、枠をはめたものではない。ほんとうに実現できるのか疑わしい。
厳しい財政事情の下、費用対効果を見極め、優先順位をつける必要性は、防衛費といえども変わらない。歯止めなき予算増は、とても持続可能な防衛政策とは思えない。米兵器の大量購入は将来に重いツケを残すことを忘れてはならない。