https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/491925
http://web.archive.org/web/20191102013529/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/491925
漆黒の夜空に立ち上る真っ赤な炎。燃えさかる火の手に飲み込まれるように、正殿の骨組みが崩れ落ちた。昨日未明の首里城大火。テレビで流れる映像が現実のものとして受け入れられない
▼東京で電車に乗っていても、火災に驚き、残念がる乗客の会話が聞こえてくる。焼失の衝撃は県内だけにとどまらない
▼出火を覚知してから瞬く間に炎が広がった。消防は正殿内で出火した可能性を指摘する。一方、屋内を消火するスプリンクラーはなかった。防火体制は十分だったのか。検証が必要だろう
▼今から70年前。奈良・法隆寺の金堂から出火し、国宝の壁画が燃えた。壁画を模写していた作業員が使っていた電気座布団のスイッチを切り忘れたためとされた。かけがえのない文化財を守る意識が高まり、文化財保護法ができる契機となる
▼文化庁が8月に公表した調査結果によると、国宝・重要文化財4218棟の約93%が木造で、火災の潜在的危険性は高い。夜間の管理体制の弱さも挙げている。対策の見直しは急務だ
▼悲しんでばかりはいられない。首里城再建へ一歩ずつ踏み出したい。市民から寄付の申し出が相次いだ那覇市は募金箱を設置。国内外で支援の呼び掛けがあるのも心強い。逆境にへこたれず、乗り越えてきたのがウチナーの歴史。今こそ、その底力を見せよう。(西江昭吾)