[宮古島で陸自弾薬庫着工] 住民合意なく許されぬ - 沖縄タイムス(2019年10月8日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/481160
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陸上自衛隊は、宮古島市城辺保良の採石場「保良鉱山」で弾薬庫の工事に着手した。
弾薬庫に隣接する保良と七又集落は総会で建設に反対する決議をしている。住民理解を得ないまま不意打ちのような着工であり、とうてい認められない。防衛省は直前の住民説明会を「弾薬庫」と明示せず開こうとしたため約100人が出席を拒否する中で約10人が参加しただけだった。とても説明会とは呼べない。
宮古島に今年3月、警備隊約380人が配備された。弾薬庫建設はそれに伴うものだ。早朝に資材を積んだトラック1台が鉱山の敷地内に入ったのが確認された。
作業員らが造成工事に向けた準備を進め、反対する住民らは発電機などを積んだトラック2台を一時阻止したが、警察に排除された。
最大の問題は弾薬庫の建設場所が集落に近すぎることだ。保良集落の最も近い民家まではわずか約200メートルしか離れていない。爆発があれば住民の生命や財産に関わる。
中距離多目的誘導弾や迫撃砲などの弾薬が保管されるとみられる。防衛省は貯蔵する爆薬量を明らかにせず火薬類取締法による保安距離が守られるかどうか検証できない。
陸自の教範には「誘導弾が火災に包まれた場合には1キロ以上の距離、または遮蔽(しゃへい)物のかげなどに避難する」と記述。さらに弾頭が火災に包まれてから約2分間で爆発すると言っている。
保良、七又の両集落には約310世帯、約510人が暮らす。高齢者が多い。短時間で、どこに逃げればいいというのか。住民から批判の声が上がるのは当然だ。

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住民が不信と不安を募らせるのは今回のだまし討ちのような着工が初めてではないからだ。説明責任を果たさず、建設を強行するやり方で住民理解が得られるはずがない。
今年4月、住民へ何の説明もないまま分屯地に中距離多目的誘導弾や迫撃砲などを保管していたことが発覚した。
防衛省は弾薬類を保管している施設を「弾薬庫」とせず「保管庫」と呼称。保管するのは「警備に必要な小銃弾・発炎筒など」と住民説明会で繰り返した。弾薬庫は造らないとも明言していた。うそをついていたのである。
住民らは「説明と違う」と猛反発。当時の岩屋毅防衛相が国会で陳謝し、弾薬は島外にいったん撤去された。その弾薬などを保良鉱山の弾薬庫に集約する考えなのだ。

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宮古島は飲料水のすべてを地下水に頼る。部隊配備と訓練、弾薬庫建設に伴い地下水を汚染する懸念が拭えない。
防衛省は警備部隊に加え、本年度末ごろに地対空・地対艦ミサイル部隊を配備する。完成すればこれらのミサイルも保管することになる。
中国を念頭に置いた軍事拠点化である。中国が大量に保有する弾道ミサイルは北海道から与那国島まで日本列島全域を射程内に収めている。
有事になれば軍事施設が標的になる。沖縄本島では辺野古新基地の建設が進む。日米軍事一体化の中で偶発的な衝突が起き、沖縄が巻き込まれる恐れが消えない。