宮古陸自弾薬庫着工 住民そっちのけの強行だ - 琉球新報(2019年10月9日)

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住民の意思を一顧だにせず、力ずくで着工したと言わざるを得ない。
防衛省は7日、宮古島市城辺の保良鉱山地区で弾薬庫建設に着手した。3棟の弾薬庫が整備され、地対艦誘導弾や地対空誘導弾、警備部隊の使用弾などが保管される。
建設現場に近接する保良部落会は2017年、七又部落会は18年に配備反対の決議をしている。着工は地域の住民自治をないがしろにした強行であり、許されない。
保良集落は建設地の鉱山から最も近い民家まで約200メートル~250メートルしか離れていない。17年の保良部落会の臨時総会では「有事の際に攻撃目標となることは明らかで、近くで暮らす住民にとっては危険極まりない施設になる」と決議で危機感をあらわにした。住民生活の平穏と安全を考慮すれば当然である。
七又部落会も決議で配備反対の意思を明確にした。「住民は常におびえ続けることになる」「有事の際に命の保障がない」。建設の強行は、平穏な住民生活を脅かす。
南西諸島への陸上自衛隊配備は、10年に改定された「防衛計画大綱」(防衛大綱)で掲げられた。南西諸島を「自衛隊配備の空白地域」と位置付け、部隊配備の必要性が打ち出された。
16年に与那国町陸自の沿岸監視隊を配備したのをはじめ、奄美大島宮古島石垣島へと次々「空白」を埋める作業が進められている。
「南西シフト」と呼ばれる防衛力強化の国策が地域に及ぼす影響は大きい。住民同士の軋轢(あつれき)や分断を生みかねない。地域が育んだ互助の精神や共同体意識などを破壊するとすれば、何のための防衛か。本末転倒としか言いようがない。
保良鉱山に隣接する住民有志が17年に行った配備反対を求める署名活動には保良集落では約8割の101世帯が署名した。七又部落会の18年の臨時会でも全27世帯のうち21世帯が参加し、出席者全員の挙手で配備反対の決議をした。明らかな住民意思を無視して基地配備を進めている現状を政府は認識すべきだ。
一連の陸上自衛隊配備計画は当初からずさん極まりないものだった。与那国町では弾薬を保管する施設を「貯蔵庫」とあいまいな言葉で説明した問題が発覚した。宮古島市上野野原へ今年3月新設された宮古島駐屯地では、置かれないはずの迫撃砲の砲弾や中距離多目的ミサイルの弾薬が「保管庫」に持ち込まれた。
今回着工した弾薬庫には、この駐屯地から島外へ搬出された弾薬などが持ち込まれる。生活圏と近接する弾薬庫について防衛省は保安距離を十分確保していると説明するが、これまでの経緯からすれば、にわかには信じられない。
弾薬庫機能や建設によるリスクなど住民が求める危機管理上の情報が開示されたとは言えない。住民合意を得ず見切り発車で工事を進める姿勢は横暴以外の何物でもない。