生活圏近くに弾薬庫 住民の安全確保できるか - 琉球新報(2019年6月5日)

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生活圏の近くに弾薬を保管する危険性が改めて浮き彫りにされた。
陸上自衛隊の教科書(教範)が、地対艦誘導弾(ミサイル)が火災に巻き込まれたときに発火、爆発するまでの時間は約2分で、その際は1キロ以上離れるか物陰に避難するなどの
対応を取ることを指示していたのである。
陸自宮古島駐屯地には2020年以降、ミサイル部隊が配備される計画になっている。これに伴い保良地区に建設される弾薬庫には地対艦・地対空ミサイルも保管される見通しだ。
近くには住宅や道路などがあり、生活圏に近い。
石垣島には500~600人規模のミサイル部隊を配備する計画がある。駐屯地内には誘導弾の弾薬庫が設置される予定だ。近隣には開南集落がある。
万一、火災が起きたとき、2分間で1キロ以上離れることができるのだろうか。
そもそも、人々が暮らす場所の近くに危険な弾薬を置くこと自体が間違っている。文字通り、爆弾を抱えた状態での生活を強いるに等しい。弾薬庫を含め配備計画を根本から見直す
べきだ。
宮古島駐屯地では、住民に説明がないまま中距離多目的誘導弾(ミサイル)などの弾薬が保管されていたことが分かり、岩屋毅防衛相が謝罪した経緯がある。その後、弾薬は、島外
に搬出された。保良地区に整備される予定の弾薬庫が完成した後、保管する方針だという。
防衛省は住民説明会などの際、駐屯地で保管するのは小銃や発煙筒だと説明していた。結果的に、うそをついていたことになる。
先島への自衛隊の配備は、南西地域の防衛態勢の強化を目的としているが、軍事拠点ができれば、攻撃目標となるリスクが生じることもまた明らかだ。
だからこそ、軍事施設の建設が地域に及ぼす影響は計り知れない。そこで生活する人々にとっては、極めて重い意味を持っている。
有事の際には弾薬庫が火に包まれる事態も想定される。平時にあっても、火災が起きないとは限らない。
そのような場合に、近隣住民の安全を確保することはできるのだろうか。防衛省は、市民に対して納得のいくように説明すべきだ。
陸上自衛隊の教範は軍事評論家の小西誠氏が情報開示請求によって入手した。各種弾薬の詳細な構造や機能、取り扱い方法を解説している。
本来、火災時の対応などは、問われるまでもなく進んで公表すべき事柄だ。都合が悪いので頰かぶりを決め込んだのか。弾薬庫を設置する以上、爆発したときに周辺に及ぼす危険に
ついても、あらかじめ住民に説明する責任が防衛省にはあるはずだ。
国の安全を守ることを目的とする自衛隊の施設が、住民の生命・財産を脅かすとすれば本末転倒と言うしかない。