関電の多額金品受領 原発マネーの検証必要だ - 琉球新報(2019年10月5日)

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国税当局の税務調査を端緒として、原発マネーの不透明さが改めて浮き彫りにされた。
関西電力の役員ら20人が、福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受け取っていたのである。関電は長年にわたって工事の概算額などに関し、元助役に情報提供の便宜を図っていた。
高浜町には関西電力高浜原発がある。税務調査では、原発関連工事を請け負う建設会社から、工事受注に絡む手数料として約3億円が元助役に流れたことが分かっている。元助役はこの建設会社との関わりが深かった。
関電から建設会社、建設会社から元助役、元助役から関電役員へと原発マネーが還流した構図が浮かび上がる。電気料金を支払う、多くの消費者は納得できないだろう。
背景には、原子力発電への依存度を何が何でも高めたい政府の姿勢がある。それにより、原発推進のためには何をやっても許されるという空気が醸成されたように思える。
監督官庁経済産業省は、この機会に原発マネーの流れを徹底的に検証し、不適切な事例がないか、究明すべきだ。
関西電力の隠(いん)蔽(ぺい)体質は根が深い。建設会社への税務調査で多額の金品の受領が明らかになり、昨年9月に調査報告書を取りまとめたものの、公表しなかった。
今年6月の株主総会前に、問題を把握した監査役が経営陣の対応に疑問を投げ掛けていたのだが、報道されるまで公表するどころか、取締役会への報告さえしていない。発覚しなければ、口を拭っているつもりだったのだろう。
極め付きは2日に開いた記者会見だ。関電首脳は金品を返さなかったのは脅されたからだと強調し、まるで被害者であるかのような発言を繰り返した。
「おまえの家にダンプを突っ込ませる」などとすごまれてもなすすべがなかった。有力者である元助役の機嫌を損ねて、原発の運営や再稼働に重大な影響が出ることを懸念したのだという。
元助役は、高浜原発3、4号機の増設で大きな役割を果たしていた。「当時の書類は残っており、世間に明らかにしたら、大変なことになる」という発言もあったとされる。関電側にやましいところがあったから言いなりになったのだろう。結局のところ、両者は持ちつ持たれつの関係だったと考えられる。
「見返りとして金品を受け取ったわけではない」という関電の主張をうのみにすることはできない。当事者の言い分にすぎないからだ。
関電の役員が元助役を介さずに建設会社から直接、金品を受け取った事例もあった。全容の解明が不可欠だ。
事ここに至っても、会長、社長は辞任を否定している。当事者がトップに座ったままでは、第三者委員会の調査もお手盛りになりかねない。少なくとも社長、会長は責任を取って即刻退陣すべきだ。