関電会見 原発不信は深まった - 東京新聞(2019年10月3日)

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「可能な限り詳細な情報を開示して、不安と疑念をぬぐうべく」開かれた関西電力トップによる異例の再会見だった。しかし肝心の「原発マネー」の流れは深い闇の中。引き続き、追及が必要だ。
何とも不思議な会見だった。まず贈られたモノが、異様である。
現金や商品券のほかに多額の金貨、小判形の金、金杯…。福井県高浜町森山栄治元助役(故人)が関電幹部に贈った、まさに「金品」の数々だ。社長就任祝いという金貨に至っては「お菓子の下」から現れた。
返そうとすると「無礼者!」と激高された。まるで時代劇ではないか。「危険を感じて返せなかった」と釈明するが、他に対処法がなかったとは思えない。
岩根茂樹社長は、こうした森山氏の言動を「独特な自己顕示欲の表れ」などと決め付けた。しかし、異例の再会見から浮き彫りになったのは、原発を運営する巨大電力会社と、立地する自治体側との異様な関係性ではなかったか。
今回の会見で、森山氏から金品を受け取っていた主な幹部の氏名が公表された。しかし、問題の核心である「原発マネー」の流れについては、依然闇の中である。
森山氏には、原発関連の受注で業績を伸ばした高浜町内の建設会社から、三億円の資金が流れていた。発注に関する情報を森山氏に提供していたことは、岩根社長も認めている。関電トップが受け取った金品は、当の関電から建設会社に支払った原発マネーが「還流」された疑いが強い。
岩根社長は「情報提供は立地地域との共生活動の一環で、提供した情報も精度の低い、概算的なもの」と資金の還流を否定した。しかし、工事概要はまたもや「個人情報」を盾に非公開、会見で提供された資料も黒塗りのまま。資金の流れは明らかになっていない。
高浜原発3、4号機の立地から、東日本大震災後の再稼働に至るまで、森山氏の「多大な協力」を得ていたことも関電側は認めている。原発立地に関する闇は、まだ深い。関電が設置するという第三者委員会だけでなく、政府として全国的に洗い直すべき大問題ではないか。
岩根社長と八木誠会長は「原因究明と再発防止の徹底」のため、ともに続投するというものの、電力消費者や国民、地元住民にも、理解しがたいのではないか。
関電だけの問題にはとどまらない。原発への不信と不安はさらに深まった。