待機児童対策 解消へ気を緩めるな - 東京新聞(2019年9月11日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019091102000142.html
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利用を希望しているのに保育所に入れない待機児童数は二年連続で減少した。保育所整備など一定の成果が出た形だが、完全に解消されたわけではない。「待機ゼロ」へ道半ばと心してほしい。
待機児童数は二〇一九年四月時点で前年より約三千人減った。それでもなお一万六千七百七十二人が保育所利用ができない現状を重く受け止めねばならない。
この間、政府はその解消に努めてきた。一三年度から五年間で約五十万人分の保育所などの受け皿整備に取り組み、一八年度からは三年計画でさらに三十二万人分の整備を進めている。その効果もあっての減少だろう。
二〇年度末にゼロ達成が政府の目標だが、見通しは甘くない。
厚生労働省は新たな支援策も打ち出した。保育ニーズの見込みより申込者が多かった自治体や、待機数がなかなか減らない自治体などに個別の対策支援を実施する。
自治体任せにしない点は理解するが、対象となる自治体は多い。きめ細かい支援ができなければ実効性はおぼつかない。
全体では待機数は減ったとはいえ二百二十二自治体で逆に増加している。増加要因の分析や支援は欠かせない。
一方で、育児休業中の人や、他に空きがあっても希望する保育所に空きがないため入所できていない人などは約七万四千人いる。待機数のカウントから除外されているが、潜在的には利用希望者だ。こういった隠れた需要の解消も忘れるべきでない。
十月から始まる幼児教育・保育の無償化で保育ニーズが高まるとみられている。無償化の対象は主に三~五歳児で待機が多いゼロ~二歳児ではないが、油断せず動向を注視する必要がある。
待機児童の解消には施設数など「量」だけではなく保育の「質」の確保も同時に求められる。企業主導型保育所は運営能力に疑問のある事業者の参入が問題化している。政府は参入に際しての審査体制の強化を早急にすべきだ。
「質」確保の要は保育士などの人材確保だ。一八年度からの三年間で約七万七千人が必要と見込んでいる。政府は順次、給与アップなどの待遇改善を実施中で一九年度も消費税財源を使い上積みをしたが、不十分だろう。さらなる待遇改善へ財源確保が欠かせない。
安倍政権が少子化を「国難」と言うのなら待機児童解消は最優先課題だと再認識すべきだ。