保育所の整備 いつまで待たせるのか - 東京新聞(2018年9月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018091802000152.html
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確かに待機児童数は四年ぶりに減少した。だが、依然として多くの家庭が保育所に入る機会を求めている。いつまで待てば希望する保育サービスを得られるのか。待機ゼロへ道のりはまだ遠い。
希望しても認可保育所などに入れない児童数は、今年四月時点で一万九千八百九十五人だった。
昨年より六千人ほど少なかった。厚生労働省は「十年ぶりに二万人を下回った」と施設整備の成果に胸を張る。
保育の受け皿は認可外施設も含め二〇一三年度からの五年間で計約五十三万五千人分を確保した。厚労省は二〇年度までの三年間でさらに三十二万人分の確保を掲げる。
ちょっと待ってほしい。
それは依然として都市部を中心に二万人近い人が入所できずにいるということだ。そのうえ「自治体が独自に定める基準を備えた認可外施設を利用している」などの理由で待機児童の集計から除外されている「潜在的な待機児童」はさらに約六万八千人いる。
政府は二〇年度末までに待機ゼロを目標に掲げるが、もともとは一七年度末にゼロにする予定だった。今も子育てと仕事の両立に困難を抱える家庭が多くいる事実を忘れるべきでない。
懸念するのは保育ニーズのさらなる高まりである。女性の就業率は74・3%で年々上昇している。政府は80%になった際の保育ニーズを想定しているが、働き方の多様化が進む今、もっと増える可能性もある。
政府が進める幼児教育・保育の無償化もニーズを掘り起こすとの指摘がある。厚労省は三〜五歳児の多くは既に保育所か幼稚園に通っていて影響は限定的と説明するが、ふたを開けてみないと分からない。
政府は油断せず受け皿整備を進める必要がある。保育サービスを提供する責務のある自治体も正確なニーズの把握に努めてほしい。
施設の「量」の確保は進んでも「質」の確保が課題として残る。適当な土地を得にくい都市部ではビルの一室を利用した小規模な保育所や、企業が従業員向けに設置する保育所などの活用は必要だ。
ただ、保育所には将来の社会を担う子どもたちが安心して成長できる環境が必要なことは言うまでもない。不足が深刻化する保育士の処遇改善と合わせ質の底上げへ財源と知恵を絞りたい。
少子化を食い止めるためにもこれ以上の先送りは許されない。