斜面 - 信濃毎日新聞(2019年7月18日)

 

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190718/KT190717ETI090012000.php
http://archive.today/2019.07.20-001702/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190718/KT190717ETI090012000.php

30代の男性公務員はネットで見つけたブログ「余命三年時事日記」を熱心に読んでいた。在日朝鮮人が日本を崩壊させるなどの内容を真実と思い込んだ。朝鮮学校への補助金の停止に弁護士会が反対する声明を出したことにも反発した

   ◆

ブログの呼び掛けに応じ、声明に賛同した弁護士の懲戒処分を求める文書に署名押印して指定先に送った。読者の多くはカルトの信者のように同じ行動に走っている。2017年、各地の弁護士会に届いた懲戒請求は約13万件。大半が同様の文面だった

   ◆

男性は「洗脳されていた。それが解けた今、懲戒請求は結果的に在日朝鮮人への差別だったと思う」と悔やんでいる。在日の人々への敵意や憎悪をあおり、差別を扇動する。社会学者は「オンライン排外主義」と呼ぶ。扇動するのが政治家ならば影響はさらに広がり深刻になろう

   ◆

トランプ大統領がまたツイッターでほえている。「世界最悪の国から来て米政府はどうすべきか語っている。国に帰り、まず立て直してから米国に来い」。人種差別を批判している元ソマリア難民ら民主党の4人の女性下院議員に向けられた攻撃である

   ◆

「この国が嫌なら出て行けば良い」とも言い放った。沖縄の新基地建設反対や政権批判に向けられる「日本から出て行け」と驚くほど似通う。米下院は共和党の一部議員も加わって大統領非難決議を可決した。日本は政治家の差別発言に毅然(きぜん)と対応できるのか。不安を覚えずにいられない。