地上イージス 計画自体見直すべきだ - 東京新聞(2019年6月11日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019061102000166.html
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住民の怒りは当然だ。地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の候補地を選ぶデータに誤りがあった。そもそも必要性に疑問を残す防衛装備だ。政府は配備を強行してはならない。
弾道ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とすのがミサイル防衛システムである。安倍内閣は二〇一七年十二月、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威を念頭に、海上自衛隊護衛艦に搭載する従来型に加え、地上に配備する「イージス・アショア」を二基導入する方針を閣議決定。それに基づき、防衛省は秋田、山口両県にある陸上自衛隊の演習場二カ所を配備の候補地とし、地元自治体や住民への説明を進めてきた。
データの誤りは、秋田市の新屋演習場の周辺住民の要望を受け、ほかに適地がないかを調べた同省の報告書で見つかった。
青森、秋田、山形三県の国有地十九カ所を調べ、いずれも配備に適さないと結論づけたが、このうちミサイルを探知・追尾する電波を山が遮るために不適とした九カ所は、いずれも山を見上げる角度「仰角」の数値が過大だった。
現地調査をせず、衛星写真を利用したデジタル地球儀「グーグルアース」を使用し、地形断面図の距離と標高の縮尺が異なることに気付かなかったという。
驚くべきずさんさである。国民の生命と暮らしを守る安全保障に携わる資格があるのか。これでは安全保障上の合理性や地元の意向に関係なく、最初から新屋演習場への配備ありきで進めていると批判されても仕方があるまい。
さらに、秋田市での住民説明会で職員が居眠りをし、防衛省側が謝罪した。緊張感を欠くだけでなく、周辺住民への誠意すら感じられない。政府が決めたことに住民は従うのが当然という空気が、政権内でまん延してはいまいか。
一基千二百二十四億円と高額で維持・運用費のほかミサイル発射装置や用地取得費を含めればさらに膨れ上がる。米国が価格や納期の設定に主導権を持つ対外有償軍事援助(FMS)での調達であり、巨額の防衛装備品購入の背景に、トランプ米大統領からの購入圧力を疑わざるを得ない。
北朝鮮の脅威の度合いは昨年の米朝首脳会談後、明らかに変化した。それは安倍政権の認識でもあるはずだ。にもかかわらず、イージス・アショアの導入を強行する必要性がどこにあるのか。候補地の妥当性にとどまらず、計画自体を一から見直す必要がある。