(政界地獄耳) 国民の声に耳を傾けずに政策といえるか - 日刊スポーツ(2019年12月13日)

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★民主主義のルールにのっとり丁寧に住民に説明して対峙(たいじ)し理解を求める。おおよそ建前はそうなっていたのだろう。ひとつは政府が進めていた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、秋田市陸上自衛隊新屋演習場への配備計画だが、住宅と設置予定の演習場が近く、また事前のレーダー波による人体への影響の説明にもミスが目立ち、住民の不信と不安を買っていた。結果、最善の候補地と言われた演習場を政府は断念する模様だ。

★別の候補地を探すというが、では同様の配備計画を持っていた山口ではどうなるのだろうか。こちらも住民の理解が得られないので断念するということになるのだろうか。一方、官房長官菅義偉は「各地に世界レベルのホテルを50カ所程度新設する」とするインバウンド政策を発表した。海外の富裕層を当てにした豪華ホテルで「財政投融資を活用し、日本政策投資銀行による資金援助などを行う」という景気のいい話だ。我が国では格差社会が広がり、極端な富裕層と低所得者の二極化が進み、デフレで低価格の食事や生活用品があふれている。

★それを横目に海外の富裕層を呼び込むなど、途上国の政策ではないのか。今、貧困に苦しみ、また災害の被災者が不自由な生活を強いられているが、それを後回しにしてまで進める政策だろうか。財政投融資もぎりぎりで踏ん張っている中小企業を支援する方が優先されるべきではないだろうか。「イージス・アショア」は防衛省への不信感と地域住民の反発に政府が答えた形になった。ところが沖縄はずっと県民が知事選、衆参の国政選挙などで米軍基地について反対し続けている。最近では宮古島自衛隊配備などにも政府は耳を傾ける様子がない。住民の声を聴くか否かに差がある、政策や投資の優先順位の間違いなど、国民の声に耳を傾けずに政策といえるのか。(K)※敬称略