(筆洗) 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備に関し - 東京新聞(2019年6月8日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019060802000178.html
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きのうまでの仲間が突然、悪役の側に寝返る。かつての味方をののしると、「リング上で決着をつけよう」。プロレスの世界では、対決を盛り上げるためのこうしたストーリーづくりを「アングル」と呼ぶらしい。これが盛んな米国プロレス界には、団体経営者の主導権争いや男女のいさかいといった多彩なアングルがあるそうだ。
英語の「アングル」には、「角度」「角度をつける」とともに、「狙い」「たくらみ」「歪曲(わいきょく)」の意味もある。プロレス界の言葉も、そのあたりから派生しているのだろう。
角度をめぐって、アングルではないかと疑わせる出来事だ。防衛省は、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備に関し、秋田市陸上自衛隊新屋(あらや)演習場を「適地」とした調査結果に、誤りがあったと明らかにした。
適地とならなかった九カ所に、電波を遮るおそれのある山があり、その仰角が過大になっていた。約四度なのに、角度をつけられて約一五度とされたところもあるという。
人的なミスと防衛相は説明しているそうだ。適地の地元には反対の声がある。配備を狙ってのストーリーづくりではないか。そんな疑いが浮上しても仕方ないだろう。
ミスであるとするならば、ずさんさが実にひどい。トランプ大統領の米国から、一千億円を超える高額な買い物である。政権を仰ぐ角度も影響されないか。